がんの3大治療として手術、放射線治療にならぶ薬物療法。その進歩は目覚ましく、近年新しい薬が登場し、劇的に変化している。今回は、大腸がんの薬物療法の最新状況について、専門医を取材した。本記事は、2023年2月27日に発売予定の『手術数でわかる いい病院2023』で取材した医師の協力のもと作成し、お届けする。
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2022年に開かれた欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で、大腸がんの薬物療法に関して驚くべき臨床試験の結果が報告された。MSI-High(遺伝子の修復機能にかかわるが不安定になっている)タイプの大腸がんの患者に、新しい免疫チェックポイント阻害薬を投与したところ、8~9割の人でがんが消失したというのだ。
学会に出席していた愛知県がんセンター薬物療法部部長の室圭医師は、「まだ臨床研究の段階で、対象患者は非常に少ないのですが、もしかしたら一部の大腸がんでは、切除することなく薬で治す時代がくるかもしれません」と大きな期待を寄せる。
国立がん研究センターによると、わが国で大腸がんにかかる人は年間15万~16万人。男女とも2番目にかかる人が多いがんだ。早期発見であればほぼ治るがんといってもよく、それだけにがん検診(便潜血)の有用性が高いといえる。
大腸がんには大きく「結腸がん」と「直腸がん」に分かれ、治療法も若干異なる。ここでは結腸がんについて紹介する。
大腸がんの治療は、ごく早期なら内視鏡的治療が可能だ。進行しているものに対しては手術がおこなわれるが、最近は低侵襲の腹腔鏡手術が主流になっている。また、手術で切除した検体を調べて再発のリスクが高ければ、術後化学療法が実施される。
一方、再発や転移がんでは薬物療法がおこなわれるが、がんが切除可能な状態まで縮小したら、手術で切除することも選択肢の一つとして出てくる。
大腸がんの薬物療法は、大きく術後の再発予防のための「術後化学療法」と、がんの縮小効果を狙う「転移・再発がんの全身療法」の二つが挙げられる。室医師が解説する。