痴漢現場を目撃→撮影→拡散で慰謝料を請求される? 弁護士がすすめる最もよい対処法とは

デジタル・タトゥー

2023/01/29 11:30

※写真はイメージです(Getty Images Plus)
※写真はイメージです(Getty Images Plus)

 電車の中で女性が痴漢被害に遭っている現場に遭遇したとき、スマホで動画撮影をしてネット上で拡散する行為にはどのようなリスクがあるのだろうか。

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 今月中旬、電車内で男性が隣で女性を痴漢している様子が動画で拡散されるとツイッター上で話題になり、顔にモザイクがなかった男性の本名、職場、出身大学、家族構成が「ネット民」に特定される事態となった。この動画の撮影者は、卑劣な痴漢行為を許せないという思いから、SNS上で拡散したのかもしれない。
 
 弁護士法人LEONの蓮池純弁護士は「痴漢の被害現場を撮影する行為自体は、罪に問われないと思います。更衣室などでの盗撮や、公共の場であってもスカートの中を撮影する行為などは犯罪ですが、公共の場で単に動画を撮影するだけでは犯罪には該当しませんし、民事上の責任を発生させることもほとんどないと思います」と説明した上で、続けた。
 
「ただ、SNS上でこの動画を拡散させたとなると、話は別です。民事上の責任を生じさせる可能性があります。動画の拡散行為が違法になるかどうかは、難しい判断になりますが、『公共上の利益』と『個人の権利』をてんびんにかけて、判断することになります。もちろん痴漢というのは許されない行為ですので、被害現場の動画を第三者がアップすることには、原則として、公共上の利益が認められます。国民がこの動画を知ることで犯罪の抑止力になる。犯人が逃走していたら検挙につながる可能性もあります。一方で、男性にモザイクがかけられず素顔が出て、本名、職業、出身大学、家族構成など個人情報が広まった場合、被写体の男性の個人の権利も大きく制約されることになります。不必要に個人情報が拡散されたということになると、公共上の利益よりも個人の権利が上回ると判断され、肖像権とプライバシー権を不当に侵害する『不法行為』(民法709、710条)に該当するとして、動画の拡散者が男性から動画の削除、慰謝料を請求されるケースも考えられます。拡散者だけでなく、男性の職業、顔写真を拡散させる目的で情報提供する『特定班』と呼ばれる人たちも、不法行為で同じく訴えられる可能性があります。もし、男性が冤罪だった場合は動画の拡散者や情報提供者が個人の権利を大きく害する行為をしたということで、さらに厳しい立場になるでしょう」

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