とはいえ、同世代ならどんな人でもいいというわけではありません。

「なによりも、幸せそうな人の近くにいることです。不平不満ばかり言う人やぎすぎすした人に囲まれていたのでは、楽しくありません。幸福感は伝染するものです」(川口さん)

 さらに「素敵な人」と交流することも大切だといいます。素敵な人とは、現役時代の仕事や肩書といったものを捨てて、自分の価値観をもって自分らしく生き生きと活動している人だと、川口さんは言います。

「たとえば新聞の俳壇に何度も掲載されているとか、楽器演奏やプラモデルづくりがプロ級とか、なんでもかまいません、何かに一生懸命になっている人が素敵な人といえるでしょう。そういう人の近くにいることが刺激になり、自身の活力となります。互いに影響し合いながら、人間関係やコミュニティーが進化していく、それこそが住み心地のよい環境といえるでしょう」(川口さん)

週刊朝日ムック『早めの住み替えを考える高齢者ホーム2023』
週刊朝日ムック『早めの住み替えを考える高齢者ホーム2023』

 人間関係にも重点を置いて住み替えを考える、そのことが長く続く老後の生活を充実したものにするためのカギになりそうです。

■重要なポイントは「誰に介護されたいか」

 元気なうちはまだしも、脳卒中で倒れて後遺症が残った場合や、認知症になって記憶力や思考力が低下していく状態になった場合、つまり要介護状態になったとき、「どこに住むか」は深刻な問題となります。

「要介護になったら高齢者ホームのお世話になる」と漠然と考えている人も多いようですが、高齢者ホームへの住み替えは自分にとって快適な介護生活となるのでしょうか。

 あるいは、「要介護になっても自宅で過ごしたい」と望む場合はどうでしょうか。自宅での介護では介護ベッドなどの設備を整える必要があります。

 プロの手を借りるにしても、介護の中心となるのは家族です。介護離職や夫婦別居など、子ども世代にライフスタイルの変更を強いる結果になるケースも少なくありません。自分が思い描いていた「自宅での介護生活」とは程遠い現実が待ち受けている可能性もあるのです。

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最初に考えるべきは「自分は誰に介護されたいか」