腸と免疫を強くするため、漢方にできることがあります ※写真はイメージです (c)GettyImages
腸と免疫を強くするため、漢方にできることがあります ※写真はイメージです (c)GettyImages

 腸内フローラや乳酸菌といった言葉とともに、最近では“腸と免疫”の関係を耳にすることも増えました。実は、日本の漢方のルーツである中国伝統医学「中医学」にも、胃腸を元気にする養生法があります。本記事では、中医学の養生法から【「腸管免疫」の整え方】を紹介します。夏バテから回復し、秋冬を元気に乗り切るため、今からしっかりケアしましょう。

【写真】教えてくれたのは中医学講師の菅沼 栄先生

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■「脾胃(ひい)」の不調改善で、腸内環境を整える

 免疫は、病原菌などの異物を排除し、身体を守る防御システムのこと。その働きを担う免疫細胞の約70%は腸に集まっていて、「腸管免疫」と呼ばれています。

 口から食道、胃腸、肛門までひとつながりになっている消化器官は、“内なる外”とも言われ、常に外界にさらされています。身体に必要な栄養素や水分を摂取する一方、病気の原因となるウイルスや細菌なども運び込んでしまうため、腸管免疫がバリアとなって働いているのです。このバリアを強くするためには、腸内フローラ(腸管免疫を支える、約500 種・100 兆個ともいわれる腸内細菌叢)のバランスを保ち、腸内環境を良好に保つことが大切です。

 よく知られているのは乳酸菌や食物繊維を積極的に取る方法ですが、中医学では、腸内環境の悪化につながる不調にも対処が必要と考えます。腸管にあたる臓器「脾胃(胃腸)」の不調を招く主な要因は、胃腸虚弱、湿の停滞、過剰な熱、ストレスなど。こうした要因を取り除き、脾胃の働きを良くすることで、腸内環境を整えていきます。

 また、中医学では、免疫力は「衛気(えき)」(身体の防御力となるエネルギー)によって保たれていると考えます。衛気は脾胃で生み出されるため、こうした意味でも、免疫力アップには脾胃のケアが欠かせないのです。

■腸内環境を整えるタイプ別「脾胃」のトラブル対策

「脾胃(胃腸)」の不調は腸管免疫に影響しますが、その要因はさまざま。症状から4つのタイプに分けられ、原因や食養生も異なります。まずは自分のタイプを知り、適切な対処で脾胃の働きを健やかに整えましょう。

【タイプ1. 疲れやすい「胃腸虚弱」タイプ】

「脾胃(胃腸)」が弱いと、消化・吸収、排泄の働きが落ちて腸内環境が悪化しやすくなります。

 また、栄養を十分に取ることができないため、身体の免疫力となる「衛気」も不足しがちに。さらに、衛気は「肺」とも関わりが深いため、“肺の母”と言われる脾胃が弱くなると、衛気の状態にも影響してしまうのです。

 このように、脾胃の虚弱は腸管免疫を含めた身体全体の免疫力低下につながります。慢性疾患、術後、高齢などの人は脾胃の虚弱を招きやすいため、しっかり栄養を取って脾胃を元気に保つことが大切です。

●気になる症状
疲労感、倦怠感、食欲不振、お腹の張り・痛み、胃痛、胃のムカつき、消化不良、顔色が黄色い、痩せ気味、冷え、軟便、舌が厚く色が淡い

●食の養生
甘味、温性の食材で脾胃を整え、気を養いましょう。
大豆製品(豆腐、納豆など)、米、豚肉、鶏肉、太刀魚、鯛、山芋、きのこ類、かぼちゃ、 じゃがいも、いんげん豆、キャベツ、りんご、棗(なつめ)など

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