ウクライナ国防省のツイッターから
ウクライナ国防省のツイッターから

 連日の報道で目にするウクライナの戦場。上空から撮影した映像もめずらしくないが、それらの多くは家電量販店などで販売されているドローンで映したものともいわれている。民生品だけでなく、軍事用に開発されたドローンにも市販品のデジタルカメラが使われているケースがある。身近な製品が軍事用に使われている現状について、『ドローンの世紀-空撮・宅配から武装無人機まで』(中央公論新社)の著者で、軍事技術に詳しい井上孝司さんに聞いた。

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 4月11日、ウクライナ国防省は鹵獲(ろかく)したロシア軍の偵察用ドローンを分解し、その動画をTwitterに投稿した。ウクライナ軍の兵士が手にしているのは「Canon」のロゴが見えるカメラだ。偵察の「目」としてドローンに搭載されていたという。

 この動画のカメラについて、キヤノンに確認を求めたところ、以下のように回答があった。

<実際の製品を確認することができないため、当社製カメラであるとの保証はできませんが、写真を見るかぎりではキヤノンロゴが確認できますので、特殊な細工などがされていないかぎり、当社製のカメラと推察します>(キヤノン広報部)

 動画に映ったカメラを詳細に見ると、ボディーはキヤノンEOS Kiss X8i、レンズはEF50ミリF1.8 STMであることがわかった。ファミリー向けのデジタル一眼レフが戦場で使われている現実に、大きなギャップを感じる。

■手っ取り早く市販品を流用

 ロシア軍の偵察用ドローンに搭載されている日本製カメラはキヤノンだけではない。兵器の部品供給を追跡する英NGO「Conflict Armament Research」によると、ウクライナで回収した別のタイプのロシア製ドローンからはソニーとオリンパス(現OMデジタルソリューションズ)のカメラが見つかった。先の井上さんは、こう言う。

「日本メーカーのカメラが偵察用ドローンに使われているケースは、実は先例があります。北朝鮮です」

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民生品なら安価で数を揃えるのも容易