「詰め込み」「偏差値」というイメージが強い中学受験。「受験のための勉強は子どもの将来に役に立つの?」「難易度より、子どもを伸ばしてくれる学校を選びたい」といった悩みを抱えている親御さんも増えています。思い切って「偏差値」というものさしから一度離れて、中学受験を考えてみては――。こう提案するのは、探究学習の第一人者である矢萩邦彦さんと、「きょうこ先生」としておなじみのプロ家庭教師・安浪京子さんです。AERA dot.連載16回目の今回は、「探究的な学び」をさせたいと考えている、小4男子のお母さんからの相談です。

MENU ■優秀な子が集まる=レベルの高い探究、ではない ■「偏差値」という基準で考えるとややこしくなる ■目的ありきの探究は、探究ではない

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安浪:この連載のテーマと同様、偏差値にとらわれたくないけれど、やはり偏差値も気になる……というお悩みですね。

矢萩:そうですね。まずは学校における「探究的な学び」って何か?ということから考えていきましょうか。僕自身は知識や経験の有無や習熟度に関わらず、みんなが一緒に参加し、思考できる授業を「探究的な授業」と考えています。ですから、模範解答や正解はないですし、知識や経験に違いがある人が集まれば、より多様な方法やプロセスになります。知識があれば優れているというわけではありません。知識があると逆に視野が狭くなっている可能性もあるんです。

■優秀な子が集まる=レベルの高い探究、ではない

安浪:優秀な子が集まったら高いレベルの探究ができるか、というとそういうものでもない、ということですね。

矢萩:そうですね。極論を言えば、参加者それぞれが何を知っていて、何ができるのか、というのはあまり関係ありません。大事なのは参加者の知識レベルより、ナビゲーターとしてのマインドセットや、ファシリテーションの技術ですね。つまり、先生が知識がないとついてこられないような授業をしていたならば、それは探究にはなりにくい。知識がない人が置いていかれてしまうんですね。往々にして偏差値の高い学校の探究授業にありがちなんですが。「知っていることが前提」、みたいな。

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安浪京子 矢萩邦彦
安浪京子 矢萩邦彦

安浪京子(やすなみ・きょうこ)/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は『中学受験にチャレンジするきみへ 勉強とメンタルW必勝法』(大和書房)。

矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

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