それから、小説やドラマや映画なんかの物語の創作もウソの一種だと思うんだよね。いわゆるファンタジーやフィクションと言われるもの。これは、人を楽しませるという意味で、人のためにつくウソに分けられるかな。

 だから、ウソ自体が悪いものだということはないと思うんだ。どんなウソをついてしまうのか、ってことが問題なんだね。きりくんが悩んでいるのは、たぶん自分のためについてしまうウソのことなんじゃないかな?

 よしおもよくそういうウソをついていたことがあるって言ったけど、自分のためのウソって結局自分を苦しめるんだよね。「宿題をやってないのにやった」っていうウソをついても、そのあと宿題はやらなきゃいけない。しかも、そのウソをつき続けたら量もたまってしまって余計に大変になるよね。「手を洗った」っていうウソも、自分が風邪を引いたりおなかをこわしたりする原因になってしまうことがある。

 自分のためのウソがばれたときも苦しい。ウソをついた相手に怒られることもあれば、その人からの信用を失うこともある。結局、何ひとつ自分のためにはならないんだ。

 一方で、人のためにつくウソは誰かのことを助けることがある。よしおは、そんなウソに助けられた経験があるよ。テレビに出始めたばかりのころ、あるテレビの現場で大失敗したことがあったんだ。よしおの失敗のせいで現場がものすごい空気になってしまって、テレビ局のスタッフさんは大激怒。

 その時に、当時のマネージャーさんが、仕事が終わったあとに「何も問題なかったよ、スタッフさんたちもそんなに怒ってなかったよ」って言ってくれたんだ。自分でも大失敗したって落ち込んでたから、きっとよしおの心が折れないようにサポートしてくれたんだと思う。あの優しいウソには助けられたなあ。

■ついていいウソもある

 親や学校の先生からは「ウソをついてはいけない」って教わると思うけど、ウソにはいろんな種類があって、ついていいウソもあると、よしおは思う。きりくんが悩んでいるであろう自分のためのウソはあまりつかないほうがいいけど、誰かのためのウソはついていいときもあると思うんだ。

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