「遊び」と「学び」は、一見反対の方向を向いているようにみえますが、じつは……。そんな興味深いお話を 『ざんねんないきもの事典』の監修でおなじみの、今泉忠明さんに伺いました。「AERAwithKids 2024年冬号」(朝日新聞出版)から紹介します。

MENU 経験が少ないと 理屈だけになってしまう 無駄な時間のなかに 将来役立つ知恵がある 袋に発見を たくさん詰め込んで 遊びと学びを行ったり来たり… 遊びの経験を豊かにする サポート3つのコツ

経験が少ないと 理屈だけになってしまう

 父が動物学者ということもあり、僕が小さいころから、我が家にはたくさんの動物や虫たちがいました。それらを飼うために餌になる虫を捕まえたり、逃げ出さないように注意したり、動物が死ぬと解剖して標本を作ったり。動物が相手のさまざまな経験は、好奇心が刺激されることばかりでしたね。

 子どものころ、アリの巣が地下でどうなっているのか知りたくて、巣を壊さずに掘りたいと思いました。そこで考えたのがおもりを付けた糸を巣に垂らし、それに沿って慎重に掘っていく作戦です。

 じつはこの作戦、大人になってモグラを調査するときにとても役立ったのです。モグラが排泄物をためる場所の上だけに生えるキノコがあり、キノコが伸ばす菌糸をたどれば、モグラの巣を見つけられるからです。

 僕は工作も好きでした。ある時、作った船を水に浮かべるとひっくり返ってしまうので試行錯誤していたら、船底はある程度重くしないといけないことに気付きました。その後高校の物理の授業で浮力について習って、「そういうことか」とその理由がストンと理解できたのです。遊びのなかで経験として感じていたことの「理論」がわかった瞬間でした。

 これらの経験はほんの一例ですが、僕は小さいころの遊びのなかには、大人になって役に立つ知恵や学びにつながるものがたくさんあると実感しています。だからこそ思う存分遊ぶ「経験」はとても大事。経験が少ないと理屈だけの人間になってしまう気がするんです。

無駄な時間のなかに 将来役立つ知恵がある

 例えば、子どもがアリの巣をずっと見ていたら、親は「そんなこと何の役にも立たない」と思うかもしれません。でも私は、子どもが興味をもったことはとことんやらせてあげたいと思います。子どもは想定外のことをするし、失敗もするでしょう。でもそれでいい。

次のページへ親が気を付けること
著者 開く閉じる
船木麻里
船木麻里
1 2 3