内藤佐和子・徳島市長
内藤佐和子・徳島市長

 徳島市役所9階の選挙管理委員会は3月29日午後5時半頃、騒然とした雰囲気に包まれた。

【動画】市長へのリコール偽造疑惑で徳島県警が「強制捜査」に入った瞬間はこちら

「令状あるの」

「なんで突然、警察が入ってくるの」

 こんな声の中、大量の段ボール箱をかかえてなだれ込んだのは、徳島県警の捜査員たち。

徳島市の市民グループ「内藤市長リコール住民投票の会」が内藤佐和子市長へのリコール署名による解職請求を実施したが、リコールは不成立。その署名の内容に関して、徳島県警が地方自治法違反(署名偽造)で徳島市役所を強制捜査に踏み切ったのだ。選挙管理委員会にあった署名簿約7万1千人分の署名簿9226冊を押収した。

 内藤市長は2020年の徳島市長選に出馬し、全国最年少の36歳0か月で当選を果たした。しかし、その後、公約と市政運営に乖離があると一部の市民が反発。内藤市長を解職に追い込もうと、リコール署名活動を今年1月27日から開始した。市民グループは2月27日までに必要なリコールに必要な署名数、7万660筆を上回る7万1551筆を提出した。選挙管理委員会の審査の結果、有効な署名は6万6398筆にとどまり、リコールは不成立となっていた。

 不成立となったものの、徳島市の有権者が署名簿をチェックできる「縦覧」が3月25日から開始された。

 市民グループは<リコールに圧力をかけた市長グループに市長が委任状を発行して支援者が署名簿を分担して縦覧し転記しているのは重大な人権侵害です。直ちにやめるべきです>と声明文を公表。

 そして市民グループは3月28日にリコール署名の中止、署名簿提出の取り下げと返還を選挙管理委員会に申し入れた。

 徳島市役所職員によれば、3月29日には市民グループのメンバー10人ほどが選挙管理委員会に集まり、署名簿の返還について、押し問答があった。

 そのタイミングで、徳島県警が動いたのだ。

「署名簿に署名したとされる市民から『署名した覚えはないのに、勝手に名前が使われた』という申告がもたらされた。そこで詳しく話を聞いて署名が偽造された可能性があった。裁判所の許可を得て、証拠となる、署名簿の差し押さえた」(捜査関係者)

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リコールの背後に徳島の阿波踊り騒動