N700S:7号車を「S Work車両」に設定することで、客室内でも携帯電話などの通話ができるほか、ビジネスサポートツールを無料で貸し出すサービスもある(提供:東海旅客鉄道)
N700S:7号車を「S Work車両」に設定することで、客室内でも携帯電話などの通話ができるほか、ビジネスサポートツールを無料で貸し出すサービスもある(提供:東海旅客鉄道)

 2022年3月14日、JR東海が満を持して新幹線<のぞみ>を世に送り出してから30周年を迎える。今や東海道新幹線の大動脈として定着し、リニア中央新幹線品川―名古屋間が2027年に開業する(予定)までは“王者”として君臨し続けてゆくだろう。本稿では<のぞみ>と車両の歴史を振り返りたい。

【写真】懐かしの300系から振り返る「のぞみ」の30年

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■<スーパーひかり>構想と300系登場

 東海道新幹線は1964年10月1日に開業し、速達型の<ひかり>と、全駅に停車する<こだま>が設定された。国鉄が1987年4月1日に分割民営化されると、東海道新幹線はJR東海の管轄となった。発足後、車両は、先頭の丸い0系新幹線から、国鉄時代の1985年に登場した100系に置き換わっていった。

 その一方で、1988年1月に「新幹線速度向上プロジェクト委員会」を立ち上げ、東京―新大阪間を2時間30分で結ぶ<スーパーひかり>構想が始まった。当時、同区間の最速<ひかり>(名古屋・京都停車)は2時間49分で結んでいた。

 新幹線の車両はただ速ければいいというものではない。騒音の抑制、乗り心地の向上など、クリアしなければならない問題が山ほどある。加えて東海道新幹線は、ほかの新幹線に比べるとカーブが多く、ATC(自動列車制御装置)などを含め、地上設備の改修も必要不可欠だ。

 1990年、最高時速270kmの300系が登場した。100系の1両60トン程度(定員乗車時)から45トン程度に軽量化するため、東海道・山陽新幹線用の車両では初めて軽量化に優れたアルミ車体を採用したほか、座席も軽量化。さらに100系に比べ重心を低くし、車体の高さも低くすることで車体断面積を縮小し、空力音の低減に努めた。地上設備や架線の修正などもあわせて行われ、車両開発費も含めると、約1000億円が投じられた。

■命名は阿川佐和子さんの提案から

 東海道新幹線最速列車の愛称については、「お客様に親しみを持っていただけるような、聞きやすく、分かりやすい名称を前提」(JR東海)として、学識経験者や社内関係者をメンバーとする選考委員会を開いた。

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