フリーでの羽生結弦選手の演技
フリーでの羽生結弦選手の演技

 北京冬季五輪の男子フィギュアスケートはネイサン・チェン選手がSP1位に続き、フリーでも1位となり、2位に22点以上の大差をつけて金メダルに輝いた。鍵山優真選手が銀メダル、宇野昌麿選手が銅メダルを獲得した。五輪3連覇を狙った羽生結弦選手は世界初のクワッドアクセル(4回転半)に挑戦したが、惜しくも転倒し4位に沈んだ。羽生選手をノービス(日本では9~12歳)時代から知る元日本スケート連盟フィギュア強化部長で、千葉大学国際教養学部の吉岡伸彦教授が今大会の男子シングル上位4人の演技について、AERAdot.に語った。

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■羽生結弦は4回転半認定 やりきった

 羽生選手はフリーの演技の直前、スケート靴のエッジカバー2本をおでこにあて、祈っているようだった。

「天と地と」(作曲・冨田勲)が始まった。冒頭から世界初の4回転半ジャンプに挑む瞬間を、世界が固唾をのんで見守った。

「羽生がジャンプの助走に入る跳ぶテイクオフ(離陸)のところで、『あ、これは4回転半来るな』と思い、跳んだ瞬間はけっこういい線いったかもと思った」

 着氷の瞬間、転倒してしまった。

「ランディング(着氷)で、回転が足りなくて転んだのは惜しかったですね。あと30度ほど回っていればなんとかギリギリ片足で立てるところまでいって、成功していたと思います」

 昨年12月の全日本でも、羽生選手は4回転半に挑んでいたが、両足で着氷。回転不足で認定されなかった。今回は、回転が1/4から1/2足りないアンダーローテーション判定ではあるが、ジャンプの種類としてはISU(国際スケート連盟)からクワッドアクセル(4回転半)として初認定された。

 これまで世界のスケーターの中で、クアッドアクセルを跳んだ人はいなかった。

「練習などで跳ぼうとしている人はいますし、今年の全米で試みた選手がいたという話も聞いていますが、国際スケート連盟(ISU)の公式記録にはありません」

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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