ピョートル・フェリクス・グジバチ著『世界最高のコーチ──「個人の成長」を「チームの成果」に変えるたった2つのマネジメントスキル』※Amazonで本の詳細を見る
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 それに、どのようなミッションを掲げるかは、メンバーのモチベーションアップにも影響します。(3)を実現させるうえでも、コーチとして(1)は軽視できない重要な仕事と言えます。

(4)と(5)は、マネジャーはメンバー一人ひとりのコーチであると同時に、チーム全体の「監督」であり、経営メンバーの一人でもあるということ。

 要するに、チームのミッション達成とメンバー個人の成長を両立させ、個人の成長をチームの成果につなげて、会社全体にいい影響をもたらしていくことが、コーチとしてのマネジャーの役割であり、コーチングの目的です。

■最高のコーチングセッションとは?

 Googleの元コーチングディレクターで、デイビッド・ピーターソンさんという方がいます。僕が接してきた中では、「世界トップのコーチ」の一人と言っても過言ではない人です。

 彼はミネソタ大学でPh.D.(博士号)を取ったのち、全米にコーチングを広めたPDIという会社でコーチングディレクターになりました。Googleに入る前に、ずっとアメリカ中を回って経営者のコーチングをしていたエグゼクティブコーチングのプロフェッショナルです。

 僕がGoogleにいた時、彼がある研修会で面白いことを言いました。僕自身のコーチング経験を振り返ってみてもすごく納得できる言葉です。それは「今まで経験した最高のコーチングセッションは?」という質問への答えでした。

「ある社長が部屋に入ってきたので私は挨拶した。そしてセッションが始まると、私は最後まで一言もしゃべらなかった。それが最高のセッションだった」

 では、なぜこれが、最高のコーチングセッションなのか?

 それは、コーチが尋ねるまでもなく、コーチングの相手(クライアント)自身が「自分が何を目指すべきか(=ゴール)」を理解していて、「そのゴールの実現に向けて何を優先して行えばいいか」という答えを見出し、「そのことによる他人への影響(アウトカム:outcome)」まで認識できている状態だからです。

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誰にでも「コーチ」が必要な理由