記者の質問に答える日本大学の加藤直人学長
記者の質問に答える日本大学の加藤直人学長

 日本大学は10日、前理事長の田中英寿容疑者と元理事の井ノ口忠男被告の逮捕を受け、大学本部で記者会見を開いた。会見には加藤直人学長ら4人が出席。不祥事をめぐっては、学生からも不安視する声が上がるが、「学生への謝罪」は一度も口にされることはなかった。さらに、AERA dot.が今後の「学費値上げ」について質問をすると、加藤学長は「授業料について手を付けることがないように最大限の努力をしたい」としつつも、「財政は厳しい」とその可能性を明確には否定しなかった。これを受け、大学に詳しい識者は「学費値上げの可能性もある」とみる。

【写真】日本一「学費が高い」医学部はこの大学

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「アメフト騒動の会見のときのように黒焦げにはなっていないものの、『生焼け』のような会見でした。学長の回答はひたすら、のらりくらり。言い逃れのような言葉も目立ちましたし、途中で学長の携帯電話の着信音が鳴ってしまう場面もありました。あんな重要な会見でマナーモードにしていないというのは、気が緩みすぎているように思います」

 大学ジャーナリストの石渡嶺司氏はこう語る。会見で、加藤学長は「日本大学は田中前理事長と永久に決別し、影響力を排除する」と述べたほか、被害届を提出した経緯や再発防止策などに言及。田中前理事長との関係を追及する記者の質問に対しては、「個人的に田中理事長の言うことを聞いていたかどうかということでいえば、それは否」としつつも、「私は学長に就任して1年なので」といった弁明も目立った。

 会見では、学生に対する謝罪の言葉が述べられなかった。象徴的だったのは、「学生が、大学へ運営体質の改善を求めて署名活動をしていることについてどう思うか」という質問に対する、加藤学長の答えだ。

「大変、私の力となって支えていただいています」

 学生に向けた次の言葉を期待したが、回答はこの一言のみ。会場は数秒の沈黙に包まれ、司会者が次の質問に進めていいのか困惑する様子が見てとれた。石渡氏もこう話す。

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「自分たちに触れていなかった」と学生