そういう中で、イエから飛び出るための結婚。そしてイエが強烈であればあるほど、脱出は大がかりなものになるだろう。そして圭さんのように、くじけない、諦めない、粘り強い、空気を読まない力が相手に必要だ。

帰国時の小室圭さん(c)朝日新聞社
帰国時の小室圭さん(c)朝日新聞社

 改めて思うのは、日本のプリンセスが緻密に準備し、脱出を試みなければ生きていけない社会とは何なのか、ということだ。

 圭さん親子をめぐる報道を通して、私自身、うっかり圭さんの母親に対する偏見を持ってしまいかねなかった。金銭トラブルを抱えている人、いろいろ問題の多い人、疑惑のある人、誠実ではない人……そういう印象は簡単に膨らんでしまう。圭さんの母の言い分がフェアに聞かれることはほぼなく、身の危険を感じるほど追いつめられていった背景に、「お金を援助してもらう女性」に対する偏見はなかったか。「一人で子供を育てる女性」への偏見はなかったか。偏見による臆測は過激にエスカレートし、ヘイトに発展していったのではないか。

 私自身も様々な場で発言していると、事実に基づかないことを面白おかしく書かれたりする。臆測が臆測を呼ぶ過程で嵐のような誹謗中傷に巻き込まれて、一時はネットを見ることができなかったことがある。叩いてもいい人、と決められてしまった時に広がるヘイトは、一度火がつくと終息は難しい。

 先日、オンライン上での女性の安全を求める「オンライン・セーフティー・フォー・シスターズ」という団体を、石川優実さん、菱山南帆子さん、伊是名夏子さんが立ち上げた。ネットでの誹謗中傷は、時間を奪い、生活を壊し、死すら頭をよぎるようになるまでに人生を中断させる。自分の意思を貫き、発言し、自由に生きようとする女性たちがたびたびそのターゲットになってきた。もう黙らない、変えたい、という意思を女性たちが表明したのだ。オンラインは、リアル社会構造の鏡である。リアルが女性にとって安全でない社会は、オンラインも危険だ。そういう危険ななかを、たった1人丸腰で歩くのはもう無理なのだと思う。

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女性が逃げ出したくなる社会を変えるには?