4歳の娘に挨拶の習慣を身につけさせたいと、同じマンションに住む小学生に率先して挨拶する父親。しかし、子どもたちは「知らない大人と話さないように」と学校や親から言われているようで、いつも知らんぷりされてしまいます。腹立たしさでいっぱいの父親に、「論語パパ」こと中国文献学者の山口謠司先生が、『論語』の格言を選んでアドバイスを贈ります。
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【相談者:4歳の娘を持つ40代の父親】
4歳の娘を持つ40代後半の父親です。東京都心のマンションで暮らしていますが、同じマンション内の子どもたちは「おはようございます」「こんにちは」がまったく言えません。幼稚園児ならまだしも小学生でも挨拶できません。私は近隣トラブルも起こさないごく普通の住民だと思います。娘の見本になるように、マンション内で子どもたちに遭遇したときは、いつも私から挨拶してきたのですが、彼らは「完全スルー」で通り過ぎます。エレベーターで私と2人きりの状態なら分かりますが、彼らは親といる時でさえ、挨拶を返さないのです。親もそんな態度を注意する様子もなく、正直、腹立たしさでいっぱいです。
妻に話すと、「今時は『知らない大人と話さないように』と学校から教えられるみたい」とのこと。「愛想のいい子は、不審者から狙われやすいから、大人を警戒するのは仕方ない」のだそうです。今はそれが普通の教育なのですか? まともな子どもを育てようとする大人はいないのでしょうか。
【論語パパが選んだ言葉は?】
・「怒りを遷(うつ)さず」(雍也第六)
・「君子は言(げん)に訥(とつ)にして、行(こう)に敏(びん)ならんことを欲す」(里仁第四)
【現代語訳】
・「怒るべきときに怒り、怒りの方向を誤らなかった」
・「立派な人は訥弁であってもよい、実践において素早く勇敢であれ」
【解説】
お答えします。相談者さんの腹立たしさは正しい思いです! 生き方の規範として親しまれてきた『論語』にはこんな言葉があります。
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