最近だと、器とともに飲み物を味わうことを感じられるようになりました。器は舌に触れるから、飲んだ時に、器の舌触りなどで、飲んだものの味に影響するんだなと、ようやく49歳で気づきまして。この器はこの飲み物に合うのだなとか、そういうことも楽しめるようになりました。

 あと、朝6時の心地よさにも気づいてしまいました。朝6時に起きるなんて若いころはしんどさしかなかった。だけど、朝6時にしかない朝の空気感とかあるのだなと。それを前だったら「おっさんだな~」と思っていたかもしれない。だけど、その時間にしか味わえない空気間がある。これは年を頂き、色が増えたからなのだろう。

 そして。今日、これを伝えたかった。桑田佳祐さんの曲。「SMILE~晴れ渡る空のように~」。僕はサザンと桑田さんが中学の時から大好きでした。去年、この「SMILE」を初めて聞いた時は、正直、いい歌だな~とは思うけど……と思っていた。だけど、どんどん耳に馴染んでいく。とにかく歌詞も含めて心地よい。

 そして桑田さんが、最近、リリースした曲たち。「炎の聖歌隊[Choir(クワイア)]」とかもそうなんですが、メロディーと歌詞、「普遍」なんですよね。

 普遍を歌にするってすごく難しいんじゃないかと思うんです。

 40歳過ぎて、50歳目前になって気づけたのは、人生中盤を過ぎていくと、悲しいことが結構起きていく。人との別れも増えていく。親との別れや友との別れ。諦めなきゃいけないことも増えていく。30代のうちはそれが自分の身に起きてないから結局「他人事」なんですよね。でも、それが自分の身に起きていくと「自分事」になっていく。

 悲しい事も普遍なんだなと気づく。

 悲しいこともしんどいことも、普遍になって来たからこそ感じる、曲の心地よさ。

 最近の桑田佳祐さんの曲を、その内側、曲の中にある普遍を自分事として聞ける人は、この曲の居心地の良さをさらに感じられ気がします。

 まさに年を頂いたからこそ感じられる曲の心地よさ。

 そう考えると、これから年を頂くことがさらに楽しみになっていくな~。

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中。毎週金曜更新のバブル期入社の50代の部長の悲哀を描く16コマ漫画「ティラノ部長」と毎週水曜更新のラブホラー漫画「お化けと風鈴」の原作を担当し、自身のインスタグラムで公開中。YOASOBI「ハルカ」の原作「月王子」を書籍化したイラスト小説「ハルカと月の王子様」が好評発売中。作演出を手掛ける舞台「もしも命が描けたら」が9/10~12穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホールにて上演。9/17(金)20:00 より舞台配信が決定(見逃し配信:~2021/9/23木23:59)。

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鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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