1次リーグ敗退となった桃田賢斗(写真/Gettyimages)
1次リーグ敗退となった桃田賢斗(写真/Gettyimages)

 日本国内だけではない。世界中に衝撃を与えた「まさかの敗戦」だった。28日に行われたバドミントン男子シングルスの1次リーグで、世界ランク1位の桃田賢斗が、世界ランク38位と格下の韓国代表・許コウ熈に15―21、19―21のストレート負け。2戦全勝の許が首位で突破し、1勝1敗の桃田はベスト8進出を逃した。

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 スポーツ紙のバドミントン担当記者は、「許の強打に返せない場面が目立ち、持ち味のディフェンスで足が動いていなかった。ショットの精度も微妙に狂っていました。連続失点が目立ち、精神的にも焦りがあったのではないでしょうか。接戦で勝ち切るのが桃田の強さでしたが、最後までエンジンがかからない印象でした。まさか負けるとは思わなかったですが…」と驚きを隠せない。

 5年前のリオデジャネイロ五輪は大会直前に違法賭博に手を出したことが発覚して出場できず。1年間の無期限停止処分を経て復帰し、19年は国際大会で11回優勝をマーク。同年の世界最優秀選手に選出されるなど、世界ランキング1位に立ち続けた。だが、昨年1月にマレーシアの国際大会で優勝し、空港に向かう帰りの最中で衝突事故に見舞われ、全身打撲などのケガを負って現地の病院に入院。日本に帰国後、「練習時にシャトルが二重に見える」と訴えたため精密検査を受けたところ、右眼窩底骨折が判明した。選手生命の危機に見舞われたが、緊急手術を受けてリハビリを乗り越え、復帰戦となった同年12月の全日本選手権を制した。

 しかし、試練は続く。今年1月に新型コロナウイルスに感染していたことが判明。3月の全英オープンに復帰したが、世界ランキング10位のリー・ジージャ(マレーシア)にストレート負けを喫する。棄権以外で敗れたのは19年10月の全仏オープン以来1年4カ月ぶりだった。誤算はその後の国際大会がコロナ禍で中止になったことだ。マレーシアでの大けが以降、実戦が少なかった桃田はブランクが懸念されていた。試合勘を養うことで調子を上げる予定が狂い、東京五輪に臨んだ。「金メダルの大本命」は本来の姿を取り戻せないまま、コートを去ることになった。

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