岬町の担当者によれば、男性には以前から認知機能の低下がみられていたといい、3回以降は「接種券をなくした」として町から再発行を受けて接種。町は接種券を再発行する際、接種記録を把握していなかった。
心配なことに、3回目の接種があったのは、2回目の接種をした6月16日からわずか2日後。結局、その後も気づかないまま今月9日に4回目を済ませたというが、体調は大丈夫なのだろうか。岬町の担当者に予後を問い合わせたところ、「定期的に家族に電話連絡をしているが、14日時点で健康状態に変化はない」とのことだった。
大事に至らずに済んだのは不幸中の幸いだが、ワクチン接種で遅れをとる日本が、管理不足ゆえに世界でもあまり例がない“4回接種者”を生んでしまったというのは、混乱ぶりを物語るようで残念な話だ。現に日本における2回の接種完了者は、7月14日時点でわずか19.7%(首相官邸HPより)。菅義偉首相は10~11月までに希望者全員の接種を完了させると表明しているが、各地で供給ストップの状況が続き、自治体からは不満の声が噴出。16日には、東京23区の区長らが河野太郎行政改革担当相に「年内の2回接種は終わらない」として苦言を呈した。
日本が遅れをとる一方、ワクチン接種で先行するイギリスやイスラエルでは、すでに3回目接種の方針を打ち出し、8~9月の接種開始に向けて準備を進めている。これらの国を皮切りに、今後は3回以上打つブースター接種の流れが世界的に加速していく可能性も考えられる。
こうした動きについて、ワクチンの専門家である中山哲夫・北里大学特任教授(臨床ウイルス学)は「優先度」の観点から懐疑的な見方を示す。
「ワクチン接種の進んだイスラエルではコロナが再流行しているといわれていますが、感染者はワクチンを打っていない層が依然として多いです。イギリスやアメリカでも同様、接種率の低い20代の若者たちを中心に感染が広まっています。未接種者の感染が多数である以上、ブースターに注力するよりも、2回の接種率を上げていくことを優先するべきです」