※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 痰(たん)がからむ、痰をきろうと咳(せき)払いをする……。風邪などの病気がないのにこのような症状が続く場合、「のみ込む力が低下している可能性」があります。歯科医師で歯周病専門医の若林健史歯科医師によれば、この状態に「歯周病」が加わると、誤嚥(ごえん)性肺炎になる危険性が高まります。いったい、なぜでしょうか? そうならないための対策はあるのでしょうか? 聞いてみました。

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 痰がからんで咳払いをしょっちゅうする人、外を歩いていてもよく見かけますね。他人であっても、「大丈夫かな?」と気になるものです。

 風邪や肺の病気などが原因でない場合、「年のせい」と軽く受け止めがちです。それは当たらずも遠からずですが、かといって、放置しておいていいわけではありません。なぜなら、こうした症状はのみ込む機能が低下しているサイン。のみ込む機能がさらに低下すれば、高齢者の死因として知られる誤嚥性肺炎を引き起こす危険性が高くなるからです。

 痰は気道から出る分泌物。健康な人にも少しずつ出ていますが、病原菌などの異物が付着するなど、異物が付着したときに増えます。これを排除しようと私たちは痰を出そうと咳払いをするわけです。誤嚥と言って、食べたりのんだりしたもの(唾液も含む)が本来、入るべき食道ではなく、気道に入りかけてしまったときも同じような状態になり、咳でこれを出そうとします。いわゆる「むせる」状態で、咳払いが多い人は知らず知らずのうちに誤嚥をしている可能性が高いのです。

 誤嚥は年をとるにつれ、起こりやすくなります。これはなぜでしょうか。私たちの喉(のど)は食事の際には食べ物の通り道となり、呼吸の際には空気の通り道となります。この仕分けをしているのが喉頭(こうとう)です。喉頭は気道の入り口にある器官で、喉頭蓋(こうとうがい)や声帯(せいたい)をもっています。

 喉頭蓋や声帯は呼吸をしているときには開いていて、物をのみ込むときにはかたく閉じ、食物が気道に入らないようになっています。文字通り「蓋(ふた)」の役割をしています。加齢とともにこの蓋の働きが悪くなり、開閉がスムーズにいかなくなるのです。

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若林健史

若林健史

若林健史(わかばやし・けんじ)。歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演。AERAdot.の連載をまとめた著書『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか?聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中。

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