「大規模接種施設ではワクチン確保を前提に体制を組んでいるので、ワクチンが来ないとなれば、スケジュールなどを変える必要があるし、接種が遅れてしまう。大学との連携も進まなくなる」

 大学側にも見解を求めると、ワクチンの供給の目途が立っていないことを知らされていないようで、「現時点では聞いていない」(青山学院大広報)、「まだ都から話は来ていない。特段にコメントはない」(一橋大広報)、「ワクチンが足りない状況があるのであれば、東京都と検討して、対応を決めていく」(東京都立大担当者)と一同に困惑した様子を見せた。

 厚労省健康局予防接種室の担当者に東京都への供給を拒否した理由を直撃したところ、「現在、精査中ということです」と都の見解と食い違う回答をした。今回の決定は誰が行ったのか、と尋ねると、「それは何とも言えない。厚労省だけで決めるものではない」と言葉を濁した。もう一度、誰がどう意思決定をしているのかと尋ねると、「厚労省の中では健康局となるが、大臣や官邸も関わるので…」と繰り返した。

 新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中、五輪を目前に控える東京でワクチン供給がストップすれば、とばっちりを受けるのは、1400万人もいる都民だ。円滑に進むことを願いたい。
(AERAdot.編集部 吉崎洋夫)

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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