夜中まで飲み続けた結果、朝起きた瞬間から頭がぼうっとして気力がいまひとつだったり、という日が続くようになった ※写真はイメージです(gettyimages)
夜中まで飲み続けた結果、朝起きた瞬間から頭がぼうっとして気力がいまひとつだったり、という日が続くようになった ※写真はイメージです(gettyimages)
「さくらの木クリニック 秋葉原」院長の倉持穣医師(写真/本人提供)
「さくらの木クリニック 秋葉原」院長の倉持穣医師(写真/本人提供)

 このままお酒を飲み続けていいのだろうか……。お酒が大好きな一方で、内心そんな不安を抱いている人も少なくないはずだ。筆者もまさにその一人である。独力で「断酒」できる自信はないし、かといって病院に行くのも何か嫌だと、だらだらと流されてきた。ただ、聞けば最近は「減酒外来」というカテゴリーができて、いい薬も登場したとか。「恥ずかしい」「かっこ悪い」。ひと通りの言い訳を酒で流し込んで、いざ減酒外来の敷居をまたいでみた。

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 まずは、恥を恐れずに筆者の現状を記したい。

 44歳。もともと酒が好きで、家ではそんなに量は飲まないが、外で友人らと飲むときは、ほどほどで終わらないことも多かった。

 だが、昨年春に妻が病気で天国に旅立ってからは、場所は関係なく目に見えて酒量が増えた。寂しいから気を紛らわせようと飲んでしまうのだが、それでも、友人たちと会うときは明るく楽しく飲めていた気がする。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言下で、その友人たちと会う機会がなくなってから、どこか気分が落ち込んだまま、家で独り飲む“暗い酒”の時間が長くなり、量がまた増えた。

■深夜に「エンジン」かかり…

 特に4月以降はひどい。たくさん飲んでもだいたい決まった時間に寝落ちしていたはずが、深夜にエンジンがかかってしまい夜中まで飲み続けることが増えた。

 仕事にも影響が出てきた気がする。やろうとしたことをすぐに忘れたり、朝起きた瞬間から頭がぼうっとして気力がいまひとつだったり、という日が続くようになった。

 4月に受けた健康診断で肝機能障害の疑いが指摘された。健康診断で肝機能の問題を指摘されたのは人生で初めて。このままではまずいと自分自身に危機感を覚え、インターネットで調べるうちに「減酒外来」に行き着いた、という経緯である。

 今回訪れたのは東京・秋葉原駅の近くにある「さくらの木クリニック 秋葉原」。

 院長の倉持穣医師はアルコール医療の専門家で『クリニックで診るアルコール依存症 減酒外来・断酒外来』(星和書店)の著書がある。2014年に開院し、翌年から「減酒外来」にも取り組み始めた。

 診察の前に、アルコール依存症とは何か、減酒外来とは何かを聞いてみた。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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