※写真はイメージです(gettyimages)
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 日本に対するサイバー攻撃が増加している。警察庁によると、2020年に確認されたサイバー攻撃と見られる不審接続は1日平均で6506件。15年の729件から約9倍も増えている。こうした中、今年4月に中国軍が関わったサイバー攻撃が明らかになり、注目を集めた。日本をターゲットにしたその攻撃とは――。

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「中国からのサイバー攻撃は年々増えている」

 こういうのはセキュリティーサービスを行う日本サイバーディフェンスのカータン・マクラクリン社長だ。

 4月、警視庁が2016年から17年にかけて日本の航空・防衛関連の企業が大規模なサイバー攻撃を受けたと公表した。これには中国人民解放軍が関わったと見られている。無論、中国側は否定する。

 中国の実態はどうなっているのか。マクラクリン社長はこう指摘する。

「中国は軍事作戦の一つとしてサイバー攻撃を実行する専門の部隊を持っている。詳細はわかっていないが、人民解放軍を含めて政府のサイバー作戦に関わる人員が5万から10万もいると見られています。中国の高いサイバー能力に対する潜在的な危険性や国の重要なインフラに対する明らかな脅威を日本は認識するべきです」

 様々な部隊や軍と関連する集団があると見られているが、その中でも日本を対象に活動をするのが、「ティック」(Tick)と言われる中国系のサイバー攻撃集団だ。航空会社や電力会社、自治体など重要なインフラを担う企業・団体を標的にしていると見られている。

 16年から17年にかけて行われた攻撃では、JAXA(宇宙航空研究開発機構)や三菱電機、日立製作所、慶應義塾大、一橋大など200機関が対象になったとされる。被害は報告されていないが、一部で情報が流出した可能性が指摘されている。

 サイバーディフェンス研究所上級分析官で、日本サイバーディフェンスシニアエグゼクティブアドバイザーの名和利男さんは、「軍の明確な指示がなくても、様々な企業などからサイバー攻撃を仕掛けているケースが多い」と見る。

 その背景にあるのが、中国の産業政策だ。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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