女性たちの東京五輪・パラ抗議オンラインデモ 生活と引き換えの「感動」に価値があるのか (1/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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女性たちの東京五輪・パラ抗議オンラインデモ 生活と引き換えの「感動」に価値があるのか

連載「おんなの話はありがたい」

五輪マークのモニュメント(c)朝日新聞社

五輪マークのモニュメント(c)朝日新聞社

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

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 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、目前に迫ってきた東京五輪・パラリンピックの開催について。

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 そういえば私は平昌冬季五輪の開会式を見に行ったのだった。

 あのとき、事前の平昌五輪報道はひどいものだった。いわく、平昌はとにかく寒い。夜ともなれば体感はマイナス12度だ。メイン会場には屋根がなく、開会式は夜に行われるというのに防寒対策は小さな毛布1枚程度で、凍死者が出る可能性もある……というもので、なかにはできたてのカップラーメンが一瞬にして凍るというパフォーマンスを見せるメディアもあった。無謀な平昌オリパラの運営を批判し、「オリパラ史上初の無観客での開催になるのでは!?」と、むしろそれを望んでいるのではないかと思うような、意地の悪い報道も少なくなかった。

 そこまで寒いのか……と私は恐れ、万全な防寒対策をした。マイナス20度の冷凍庫内で作業する人用の手袋や靴下や下着を身に着け、カイロを全身に貼り、ヒートテックを3枚重ね着し、さらにセーターを着て、シュラフを片手に、スキーウェアで会場に向かったのだ。しかも報道では「会場費の予算がなく、トイレが少なく混乱が予想される」というようなものもあり、一緒に行った友人は、母親の介護用の紙おむつを持ってきたほどだった。そう、死と漏れにおびえながら、私たちはオリンピック会場に向かったのだ。

 そして……結論を言えば、私たちは間違いなく会場で最も厚着の女だった。なにしろ着ぶくれしているのでヨタヨタとしか歩けず、凍死しないためのシュラフやら毛布で手荷物がかさばり、観客数万人の人流のなかで汗が止まらず、口から出る言葉のほとんどが「暑い……」「のどが渇いた」(五輪会場は飲み物持参が禁止されている)で、冷たい飲み物、いやむしろかき氷を求めたい気分だった。驚いたのは「防寒対策はほとんどない」と嘲笑気味に日本では報道されていたというのに、観客全員に配られた防寒グッズの中には、ふかふかの毛布に耳まで隠れる帽子、手用のカイロ、椅子に敷くカイロや、防寒ポンチョがぎっしりと詰められていていたことだった。シュラフを広げることもなく、もちろん紙おむつなど不要で(トイレは潤沢にあり並ぶこともなかった)、額にうっすら汗をかきながら私たちは「キャンドル革命」を再現する開会式のパフォーマンスや、南北選手団が一緒に入ってきたときに沸き立つ会場の熱気に胸を熱くする時を過ごしたのだった。


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