2015年7月、日本でこれまで認められていなかった外国人の「家政婦」の雇用を特区に限り認めることが法制化された。竹中氏はこの決定をした戦略特区諮問会議の議員だ。そして翌年の16年7月、パソナが事業者として認定されることが決まった。この決定にパソナの株価が上昇したことが当時の新聞で報道されており、まさに「自分で決め、自分で儲ける」という竹中氏の真骨頂が示された形だ。

 問題はそれだけではない。特区は、規制改革提案を民間から広く募り、それをワーキンググループで絞り込み、最終的に首相が議長の諮問会議で決定する仕組みだ。諮問会議の議員である竹中氏は有力な提案を本来ジャッジする立場のはず。

 ところが、この「外国人家事代行サービス」は、なんと諮問会議の民間議員提案だった。14年5月の諮問会議で、竹中氏ら4人の民間議員が「追加の規制改革項目」として外国人家事代行サービス導入を提案。

 この会議の場で、竹中氏は「スピード感が大事」と、安倍前首相を始め、居並ぶ閣僚に発破をかけ、その甲斐あって1年後の法制化へとつながっていく。つまり、「提案、決裁、受注」のすべてに堂々とかかわっていたことになる。永田町で”政商”と批判される所以だ。

 そんな竹中氏が率いるパソナグループは2021年5月期で、過去最高の175億円の営業利益を確保する見通しとなった。東京五輪や新型コロナウイルス対応の人材派遣などを数多く受注しているのは周知の通り。

 さぞかし機嫌がいいかと思いきや冒頭の「五輪発言」。我が世の春も菅政権の状況によっては先行き不透明だ。国家戦略特区にかかわった官僚が言う。

「新型コロナで菅首相も規制改革どころではない。国家戦略特区も下火になっており、案外、竹中氏が菅首相に捨てられる日が来るかも知れない」

(渡部俊輔)