手術前には、網膜や水晶体の状態を調べる検査、眼内レンズの度数を決める検査などをおこなう。これまでの視力の変化や既往歴、薬の使用状況などについての問診も重要だ。

 白内障の手術では、麻酔をして角膜を小さく切開し、超音波乳化吸引装置という機器で濁った水晶体を破砕して吸引する。その後、水晶体の代わりとなる眼内レンズを挿入する。手術にかかる時間は目の状態により異なるが、最近では日帰り手術も可能となっている。ただし、術後は炎症や感染を防ぐために点眼薬の使用や通院が必要なため、通院が困難な人、家族の援助が受けられない人、合併症がある人などは入院が必要だ。また、頻度は低いが術後に細菌感染を起こし早急な対応が必要になることもある。

「急激に視力が低下し、短時間で悪化する場合は、夜間でもすぐ病院に連絡することが必要です」(黒坂医師)

■ライフスタイルでレンズを選択する

 手術で挿入する眼内レンズには、遠方・近方のどちらか1カ所に焦点を合わせる「単焦点レンズ」と、複数の位置に焦点を合わせる「多焦点レンズ」があり、それぞれにメリット、デメリットがある。

 単焦点レンズは、1カ所のみにピントが合うため、遠くに合わせた場合は近くを、近くに合わせた場合は遠くを見るための眼鏡が必要になる。しかし、ものがクリアに見える、ほかの目の病気がある人なども適応しやすい、保険が適用されるなどの利点がある。

 一方、多焦点レンズは、遠方(5メートル以上)と近方(30~50センチ)の2カ所にピントを合わせる「二焦点レンズ」のほか、近年では遠近に中間距離(60センチ~1メートル)を加えた「三焦点レンズ」も登場。眼鏡をかけたくない人、テニスなどスポーツをする人に向いている。ただし保険適用外となり、暗い場所などでは眼鏡が必要になることも。また、例えば手元で絵付けをする、写真の校正をするなど細部まではっきり見ることが必要な人には向かないこともある。

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