※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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白内障データ
白内障データ
イラスト/今崎和広
イラスト/今崎和広

 加齢により水晶体が濁り、目のかすみや視力の低下を引き起こす白内障。手術では濁った水晶体を除去し、代わりとなる眼内レンズを入れる。近年では眼内レンズの種類も増え、「見え方」の選択肢が広がっている。手術のタイミングやメリットについて眼科医に聞いた。

【データ】白内障にかかりやすい年代は?主な症状は?

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 白内障は年齢が上がるほど起こりやすくなる。最大の要因は加齢であるため予防は難しいが、治療により視力を回復することは可能だ。

 白内障の治療法には、薬物療法と手術がある。ただし、薬を使用しても濁った水晶体を透明に戻すことはできず、薬物療法の目的は、白内障の進行を遅らせることに限られる。水晶体の濁りが軽度で、症状による不便が少ない場合は薬物療法をしながら経過を観察する。

 白内障の手術は、外科手術の中でも安全性の高い手術で、年間約160万件おこなわれている。手術のタイミングについて、「視力がいくつ以下になったら手術をするべき」という明確な適応基準はない。岩手医科大学病院眼科教授の黒坂大次郎医師はこう話す。

「ライフスタイルや、見えないことによる不便の感じ方は人それぞれです。仕事などにより、はっきり見えないと『とても困る』という人もいれば、家で過ごすことが多く、多少の見えにくさは『問題ない』という人もいます。手術をしないことで別の病気を誘発するリスクがある場合を除き、不便を感じなければ手術を急がなくてもいいでしょう」(黒坂医師)

■視力の回復により意識や行動に変化も

 筑波大学病院眼科教授の大鹿哲郎医師も「日常生活に支障をきたすようになったら手術をすすめる」と話す。「もう少し考えたい」という患者には無理に手術をすすめることはしないが、生活の質(QOL)を考えると、「見えない状態であまり長く過ごすのはもったいない」とも話す。

「手術をすれば視力が回復し、QOLも改善します。見えないことで家に引きこもり、ほとんど寝たきりのような生活をしていた人が、術後に見えるようになったら元気に歩き始めたことや、身なりに気を使わず受診していた女性の患者さんが、術後はきれいにお化粧をして来るようになったこともあります。見えることは人の意識や行動にも影響を与えるものだと実感しました」(大鹿医師)

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