「田中容疑者は集めた事務局の幹部や自分の親族を前に『署名を偽造して数を増やす』と言い始めた。参加者は異論をはさむ暇もなく、田中容疑者が『署名簿を佐賀へ運ぶ車の手配を』などと具体的な役割を説明。スタッフが動き、名古屋市南区のレンタカー店で、署名簿などの運搬車を予約。アルバイトを集めたりする業者への発注先も決めていた」(前出の捜査関係者)

 この「謀議」から、偽造署名の「工作」が一気に進む。そして、昨年11月初め、愛知県へ提出するため、名古屋市内のホテルに署名簿が集められた。リコール活動を手伝ったボランティアスタッフがこう証言する。

「田中容疑者は部屋に持ち込まれた2つの箱を指さして、自民党大物政治家に近い団体の名前をあげ、『〇〇〇〇からの署名だ』と話した。今も記憶があります。変なことを言うなと思いました。今振り返れば、それが偽造署名の原本だったのでしょうね」

 実際に佐賀市内で偽造署名のアルバイトをした女性もこう語る。

「渡された署名簿を見ると、有名な高須院長や河村市長の写真があったので、すぐにリコール活動のものとわかった。それを大量に書き写せというのは違和感があった。だが、仕切り役の人が『なんの問題もありません』と説明していた。会場では100人弱のアルバイトがいました。こんなことを大ぴっらにやっていいのかと思いました」

 田中容疑者はなぜ、簡単にばれる方法で偽造署名という犯罪に走ってしまったのか。田中氏は愛知県議を2期務め、次期衆院選では愛知5区から日本維新の会の候補者として出馬予定だったが、偽造署名が発覚後、辞退した。署名偽造が犯罪だということはわかっていたはずだ。

 その「動機」をみられるのは、カネだ。田中容疑者はリコール活動の最中に「事務局長をやれるというのは、宝くじに当たったようなものだ」と周囲に語っていた。

「4億円を引っ張るつもりが、2億円に値切られてしまった」

 カネをもらったような内容も周辺に話していた。

 この発言については河村氏も「田中氏がそう語っていたというのは、ワシも人づてに聞いた」と認めている。

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使途不明の1億円の行方は