捜査本部に連行される須藤早貴容疑者(C)朝日新聞社
捜査本部に連行される須藤早貴容疑者(C)朝日新聞社

 和歌山県田辺市で「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家、野崎幸助さん(当時77)が覚せい剤中毒で怪死した事件で、殺人容疑などで逮捕された元妻の須藤早貴容疑者(25)。和歌山地裁が10日間の勾留延長を認めたため、19日まで取り調べが続けられる。

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 和歌山県警は須藤容疑者の認否を明らかにしていないが、捜査関係者が様子をこう語る。

「雑談くらいは応じて喋るが、事件のことになると何も言わない。認めたら、すぐにニュース速報になるんじゃないか」

 完全黙秘を貫くとなれば、気になるのは、須藤容疑者の弁護人の存在。
野崎さんが殺害された当時は東京の有名弁護士がつき、テレビにも一緒に出演して、潔白を訴えた。その後も須藤容疑者が野崎さんの2つの会社の社長に就任した際の手続き、遺産相続などにも関わったとされる。しかし、須藤容疑者が殺人容疑で逮捕後、刑事事件の弁護を引き受けた様子はない。

 須藤容疑者の逮捕から間もない4月29日、勾留先の田辺署には大阪から面会に来た弁護士の姿があった。刑事事件に強く、無罪判決も何度か勝ち取っている「無罪請負人」とされる敏腕弁護士だ。須藤容疑者の代理人に就任するとみられていた。しかし、なぜか数日間で撤退。その後は、地元の和歌山弁護士会所属の弁護人が選任されたという。

「無罪主張の刑事弁護となれば、数百万円は必要だろう。大阪の弁護士が決まらなかったのは、須藤容疑者がカネを用意できなかったのか、渋ったのかどちらかだね」(前出の捜査関係者)

 須藤容疑者は詐欺容疑でも刑事告発されている。野崎さんの2つの会社、A社とB社の社長に2018年7月に就任。その後、A社のカネ、計3800万円を引き出したとして、野崎さんのA社の元監査役が詐欺で告発し、田辺署が受理している。

 本誌が入手した告発状によると、<須藤容疑者がA社の社長に就任するために臨時株主総会を招集。代表取締役の報酬を年額1億7千万円以内とする旨の議決をした>などとA社議事録には記載。だが、実際には臨時株主総会が招集され、役員たちが出席した形跡がないことから須藤容疑者の社長就任は会社法に違反し、A社の代表権を有していなかったという。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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詐欺罪の告発状の中身は?