<須藤は(野崎さんの)妻であったにすぎず、(会社の)発行済株式の全部を有していていた(野崎さんの)財産処分の権限を有していない>とされ、A社の株式も持っていなかったという。

 また、野崎さんの死後、全財産は田辺市に寄付するという内容の遺言書の存在も明らかになっている。告発状では、須藤容疑者は報道などで野崎さんの遺言書を知り、A社から3800万円の送金手続きをしたのではないか。また送金された3800万円は、A社の会計書類には記載もない。こうした手法での3800万円の引き出しは詐欺にあたるというのだ。

 野崎さん死後、東京に戻り、ほとんど和歌山県には来なかった須藤容疑者。

「最後に姿を見たのは、2018年冬くらいかな?『こんな田舎にはもう嫌』と好き放題、言っていた。結婚なんて形だけで、最初から社長のカネ目当てだったんでしょう」(野崎さんの会社の元従業員)

 須藤容疑者はA社の法人登記簿に北海道札幌市の住所を登記していた。しかし、実際には須藤容疑者は東京のタワーマンションを転々とし、新宿や六本木のホストクラブで遊んでいたという。須藤容疑者を知るあるホストクラブの関係者がこう振り返る。

「ブランドの服、カバンなどで身を包み、ホスト遊びは手慣れているという感じでしたね。お気に入りのホストにはけっこうカネを使っていた。何度か来店して『和歌山のドン・ファンの奥さんだった人よ』と聞かされ、やっぱりカネがあるんだと思った。本人もそれを隠す様子はなく、『東京がいい、楽しい、夜は最高』なんてはしゃいていた。普通、ご主人を亡くして1年もたたないのに、そんなはしゃいだりはしませんよね」

 野崎さんの親族はこう訴える。

「須藤容疑者のような女と結婚したのは、幸助が人を見る目がなかったんやろう。けど、いくらカネが欲しいといっても、殺すことはないわな。須藤容疑者には、早く真実を語ってほしい」

 和歌山県警は19日までに須藤容疑者から供述を得ることができるのだろうか?(今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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