女子校といえば、校則が厳しいというイメージをする人もいるだろう。

 なかでも制服については、スカート丈の長さが決められていたり、アクセサリーが禁じられたり、靴下の色が指定されたり、などだ。

 一方、こうした細かなルールとは無縁な女子校がある。制服そのものがない学校だ。

 近著『学校制服とは何か』(朝日新書)では、制服着用を義務づけていない学校を掲載している。このうち、歴史と伝統がある名門女子校、恵泉女学園、日本女子大学附属、立教女学院の三校について紹介する。(以下、同書より抜粋。教員の肩書きは2020年10月現在)

◆恵泉女学園中学・高校

 恵泉女学園が制服を定めていないのは、同校の創立者、河井道の教育方針が反映されているといっていい。アメリカで学んだ河井は自分の考えをきちんと言えること、責任を持って行動することが大切であると説き続けた。学校が設立されたのは1929年である。当初から制服はなかったが、戦争中は、モンペをはかざるをえなかった時期がある。

 1948年、新制高校として再スタートした際にも制服は定められていない。服装については学校の考え方を押し付けるのではなく、生徒の判断に委ねるということである。

 恵泉女学園の江田雅幸教諭をたずねた。

「これを着なければならないというのが制服ですが、生徒が自分で考えてもっともふさわしい服で通学する、ということです。もちろん、教員は何を着てもよい、とは言いません。『この服装はどうかな』『わたしはふさわしくないと思う』など声がけはします。別の教員はそうは言わないかもしれません。一つのルールで『これを着なさい』『あれはダメ』という指導はしておらず、生徒がしっかり考えるように教えています。実際はみんなわきまえており、派手な服装をして、ファッションショーのようになることはありません。自由服だと生徒の個性が見えやすい、というメリットはあります。制服だとわかりにくいですからね」

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小林哲夫
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