「一か所に集めれば接種が進むだろうというのは、机上の思い付きに過ぎません。都内の高齢者を1日1万人単位で大手町に集めるというのは、外出抑制を促す政府の方針とも矛盾し、高齢者を感染リスクに晒すことになります。5月24日から始めるとぶち上げたが、準備期間がなさすぎる。ワクチン接種体制の確保といっても、注射ができる医療スタッフだけいればよいという問題ではない。会場整理の人員はもちろん、受付方法や動線の設定、ワクチンの配送・保管などロジの詰めも不可欠です。しかし、それらを誰が担うのか、人員をどう確保するのか。政府にはワクチン接種会場整備のノウハウが全くありません」(前出の厚労省関係者)

 菅官邸トップダウンの珍プランに防衛省、厚労省、内閣官房など関係省庁は頭を抱えているという。

「自治体から受け取った接種券を会場に持参すれば、いつでも予約なく接種できるようにすると耳障りのよいことを言っているが、見込み数を把握しないでどうやってワクチンを準備するのかすら検討されていません。ワクチンを大量に用意しても、実際に打つ人がわずかしか来なかったら大量の廃棄が生じてしまうだけ。逆に希望者が殺到してしまったらどうするのか。政府に何らノウハウもありません」(同前)

 菅政権の命運は「東京五輪」「ワクチン頼み」であるものの、ワクチン確保に失敗し、接種率が世界的にも大きく立ち遅れている惨状が明らかになりつつある。菅官邸が思い付きで打ち出した「苦肉の策」は吉と出るのか、それとも……。(AERAdot.取材班)