今季初黒星のダルビッシュ(Sean M. Haffey / Getty Images Sport)
今季初黒星のダルビッシュ(Sean M. Haffey / Getty Images Sport)

 4月17日(現地時間:以下同)、サンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有は、現在ナ・リーグ西地区首位のロサンゼルス・ドジャースを相手に最高のパフォーマンスをみせた。7回1安打1失点、9奪三振、3与死四球で、今季初勝利を飾ったピッツバーグ・パイレーツ戦(4月12日)を上回る圧巻の投球を披露。試合では負けを喫したが、早くも今季最高の試合であったと言っても過言ではない内容だった。

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 ダルビッシュとロサンゼルス・ドジャースとの対決は特別な意味を持っている。ドジャースファンにとってダルビッシュは忘れられない存在だ。発端は、2017年のワールドシリーズでの出来事だ。ダルビッシュは、ヒューストン・アストロズ相手に0勝2敗、自責点8、防御率21.60で惨敗した。「ワールドシリーズでの炎上はチームやファンの期待を裏切り、許せなかったです」と、ドジャース専門メディア『DODGERS NATION』のブルック・スミス記者は当時を振り返る。ダルビッシュに対するファンの恨みは長く続いた。

 2年後の2019年、シカゴ・カブス移籍後初めてロサンゼルスで登板したダルビッシュに大ブーイングを浴びた。このまま一生嫌われ者になるかと思われていたが、2019年末に状況は一転する。17年当時アストロズに所属していた選手の内部告発を発端に、アストロズにサイン盗みを含む不正スキャンダルの疑惑がかかった。「アストロズの不正疑惑報道以降、ドジャースファンの見方は変わりました。当時の批判は不公平でしたし、謝罪運動にも発展しました」とスミス氏は語る。スキャンダルをきっかけに、ファンの間では、「ダルビッシュは不正行為の被害者だった」と言う考え方に変わっていき、近年の活躍ぶりから、「最高の投手」であると評価を改め受けることになった。

 しかし、それも昨年までのこと。パドレスに移籍した今では話が変わる。現在、パドレスとドジャースは昨季から熾烈な優勝争いを繰り広げている。パドレス本拠地のスクリーンには”BEAT LA”(ロサンゼルスと倒せ!)と言う煽りが映し出される。地元紙『サンディエゴ・ユニオン・トリビューン』のケビン・エース記者が「パドレスファンはなによりもロサンゼルスのチームが嫌いです」と言うほど、ドジャースに対抗心を燃やしている。ドジャースファンでもある前出のスミス記者は、「よりにもよって同じ地区のライバルチームに移籍なんて……と言う気持ちがあることは否めません」と、複雑な気持ちを明かした。だからこそ、どのような結末になるのか、両チームのファンはこの試合に注目した。

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