クリスタルはタイでは「コヨーテ」と呼ばれる高級キャバレークラブで、わいせつな衣装でショーを披露したり、女性らと一緒にカラオケを楽しんだりする場所だ。

 バンコクの風俗情報サイトによると、クリスタルの会員権は2万バーツ(約7万円)から購入が可能。非会員でもドリンク代や女性の接待料金などを含めると一晩1万バーツ以上はかかるとされ、バンコクでは高級価格帯の夜遊びスポットとなる。

 特に特権階級のタイ人が集まる「夜の社交場」として知られ、「おもむろに性サービスを提供するような風俗店ではないが、金持ちが愛人を探しに来るような場所だ」(日本人常連客)という。

 一方で大使館幹部は、大使がナイトクラブを訪れた理由について、「当時はタイ当局がナイトクラブの運営を認めていた。またクリスタルは大臣や著名人が集まるような場所で、いかがわしい場所とは考えていない」と説明。大使のナイトクラブ訪問を正当化した。

 大使はこのクリスタルを訪れた後、3月29日頃に体調不良を訴える。一時回復するも、ナイトクラブに同行した人物の感染が4月2日に明らかになったため、検査を受け、3日に陽性と診断された。その後、バンコク市内の病院で治療を受けている。いまだ明らかになっていないのが、大使の同行者だ。

 タイの国営メディアは、クリスタルでは日本人10人のうち、8人が新型コロナに感染したと報じているが、その内訳は明らかになっていない。大使館側も「大使館関係者ではない」と言うにとどめている。

 3月25日に梨田大使が出席した、外務大臣表彰の伝達式には、タイ東部を拠点に活動する「チョンブリ・ラヨーン日本人会」(以下、日本人会)の顧問<当時>が出席していた。また、同顧問は自身のフェイスブックで新型コロナに感染したことを報告している。

 関係者によると、同顧問だけでなく、複数の日本人会関係者が、同じ日に「クリスタル」を訪れていたことが分かっている。

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大使の同行者の存在を隠そうと…