チョンブリ、ラヨーンはタイ東部の地名で、港や製造業の工場が集積する工業エリアだ。日本企業も複数の拠点を置いており、日本人会には自動車メーカーなど大手製造業の現地法人が会員として名を連ねている。

 一方、一連の事態に関する取材を申し込むと、日本人会の担当者は8日、「感染が確認された顧問は3月16日の総会で退任が決定していた。当会は4月1日より新役員で運営している。3月25日の式典は、団体とは一切関係が無い」と話し、説明責任はないとの考えを示した。

 複数の日本人会関係者がクリスタルを訪れ、感染者が出ていた事態についてもコメントしなかった。

 ところが一転、日本人会は9日、「新型コロナウイルス感染拡大に伴う一連のマスコミ情報について」と題した声明を発表。

「報道されている式典および懇親会は、チョンブリ・ラヨーン日本人会の主催した催しではない」と主張した上で、「参加された日本人の中に当時の役員が含まれている事実を把握している」と説明した。

 その一方で、日本人会から何人が式典や、クリスタルで行われた「懇親会」に出席し、何人が新型コロナに感染したのか、陽性者の行動履歴といった肝心の詳細については、公表しなかった。日本人会の説明には矛盾も見受けられる。

 同会は「新型コロナに感染した当時の顧問は既に退任しているため、日本人会とは関係がない」と説明している一方で、今年度から同顧問が日本人会が主催する「シラチャ日本祭り」の名誉実行委員長として活動することが明らかになっている。

 足元ではタイ国内の感染拡大は続いている。 タイで1日あたり2桁にとどまっていた市中感染者数は、4月6日に245人となり、11日には964人にまで拡大した。これを受けてタイ政府は9日、全国77都県のうち、バンコクを含む41都県の娯楽施設を対象に、バー、パブ、カラオケなどの娯楽施設を10日午前0時から23日まで営業を禁止することを決定。

 タイでは10日から始まったタイ正月の長期連休中で、例年ではお祝いムードが漂うが、クラスターの発生によって緊張感が高まっている。

 今すぐにでも感染者の行動履歴を詳細に公表し、接触した可能性のある人の自主隔離や、PCR検査を促すことで、二次感染を防ぐことに努めるべきだろう。

(東南アジア専門ジャーナリスト 泰梨沙子)