バンコク「原爆展」の開会式に出席したバンコク都のアサウィン知事(左)と梨田和也・駐タイ日本大使(C)朝日新聞社
バンコク「原爆展」の開会式に出席したバンコク都のアサウィン知事(左)と梨田和也・駐タイ日本大使(C)朝日新聞社

梨田大使が訪れ、コロナ感染したバンコクにあるナイトクラブ「クリスタル」
梨田大使が訪れ、コロナ感染したバンコクにあるナイトクラブ「クリスタル」

「日本の恥だ」

【写真】梨田大使が懇親会を行った「夜の社交場」はこちら

「日本でもタイでも一般国民に自粛を要請しておきながら、公人の行動として安易すぎる」

 梨田和也・駐タイ大使が新型コロナウイルスに感染したことが発覚し、現地の日本人社会のネットニュースでは批判の声が相次いでいる。

 在タイ日本大使館が梨田大使が首都バンコクのナイトクラブを訪れた後、コロナ感染が判明したと明らかにしたのは4月7日。しかし、同行した日本人が誰で何人いたのか、など詳しい行動履歴も明らかにしなかった。梨田大使は1984年に東京大学卒業後、外務省入省。エリート街道を進み、駐タイ特命全権大使に就任した人物だ。

 タイでは市中感染が収束傾向にあったが、3月下旬に入るとバンコクの日本人駐在員が多く暮らすエリアでクラスター(感染者集団)が発生。梨田大使が訪れたナイトクラブも、クラスターが起きた場所の1つとされている。

 大使の軽率と言わざるを得ない行為に、批判の声は止まらない。大使の感染経路がタイ語メディアでも報じられると、現地に住む日本人社会のみならず、タイ人からも「大使は辞任すべきだ」「日本人の集まる場所には行きたくない」といった怒りの声が現地のツイッターなどにも続出した。

 新型コロナの感染拡大を機に、タイでは日本人を含む外国人への感情が悪化していたが、それに追い打ちを掛けるように日本人のイメージを大きく損なう出来事となった。一連の事態に批判が集まるのは、大使館側の対応の遅さも影響している。

 梨田大使の感染については当初、日本の外務省が4月3日に発表していたが、行動履歴は明らかにされなかった。これについて大使館の幹部は、「3日時点ではどこで感染したのか把握できておらず、タイ保健省の調査の結果、7日にナイトクラブで感染した可能性が高いことが分かった」と説明する。

 しかし、感染場所を公表するに至ったのも、「記者からの追及で話さざるを得ない状況になったため」(同幹部)といい、それがなければ、行動履歴が公表されることはなかった可能性がある。

「金持ちが愛人を探しに来るような場所」

 大使館が公表を渋ったのは、その感染場所が現地でも「夜の社交場」として有名な店と推測されるからだ。大使は3月25日にバンコクの公邸で開催された外務大臣表彰の伝達式に参加。その後、プライベートで日本人らとバンコクのトンローにあるナイトクラブ「クリスタル」を訪れた。

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クリスタルのいかがわしい正体