ある居酒屋の店員は開店の準備をしながらカウンター越しにこう話した。

「緊急事態宣言中、うちの店は金曜を除き、午後8時までの時短を守っていました。うちも売上を取りにいかないといけないから、お客さんが多い金曜だけは午後10時とか11時まで営業していました。だけど、都からの『命令』は何も来てません」

 バーに勤める女性が「けっこう、この辺りは午後8時までで閉まってましたけど、あそこの店は朝までずっと営業していましたね。あそこしか営業していないから、混んでいました」と教えてくれたので、さっそく訪ねてみた。しかし、「店長はいない」と言うばかり。

 本社に問い合わせの電話を入れると「取材はすべてお断りさせていただいております。お答えすることはできませんので」と電話が切れた。

 次はJR新橋駅から電車に乗って、御徒町駅へ向かった。御徒町駅周辺では、午後9時を過ぎても複数の居酒屋のネオンが灯り、にぎわっていた。

 お客は20代、30代の若い世代が多い。飲み過ぎたのか、道路で仰向けにぶっ倒れている若者も見かけた。

 深夜まで営業していた居酒屋の店主を直撃すると、なんと東京都から命令を受けたと告白した。

「うちには、東京都から何通も書類が送られて来ました。うちの近くの複数の店にも送られて来ている」と数通の書類を見せてくれた。

 3月8日には小池百合子都知事の名前で、「弁明の機会の付与について(通知)」という文書が送付されてきていた。同書にはこう書かれていた。

「貴社に対して、新型インフルエンザ等対策特別措置法の規定により下記のとおり不利益処分を行う予定です」

 予定される不利益処分の内容とは「施設の使用制限の命令」とあり、「20時から翌日5時まで(酒類の提供を伴うものは19時から翌日の11時まで)の間において、別紙に記載する施設を営業のために使用することの停止」と記述されていた。

 弁明書の提出期限は3月15日(必着)となっており、3月19日付けで小池都知事の名前で「措置命令書」が送付されてきた。

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「措置を構ずべき期間」とは?