この1年、新型コロナウイルスはスポーツのあり方を問うてきたが、同じくワクチンもスポーツの価値を問うことになる。スポーツが生活に根付いている文化があり、様々な考えが飛び交う移民国家、イスラエルに身を置く野瀬も「こちらでは、なぜスポーツをするのかという根本的なことを考えさせられます」と話す。

 ワクチンにより、スポーツもトンネルの向こうに灯を見つけたことは間違いない。しかし以前のような日常が取り戻せるとしても、スポーツのベースには市民の生活があることや、スポーツをする意味を忘れてはいけないだろう。アスリートとしての倫理観に目をつぶり、半ば強引に推し進めようとしている東京五輪の是非も含め、スポーツのあり方をもう一度考えるべきではないだろうか。(文・小崎仁久)