これまでイスラエルは感染者の比率が非常に高く、自宅から1kmを超える移動の禁止、10人以上の集会の禁止など、厳格なロックダウンを行ってきた。これによりスポーツも打撃を受けてきたが、ワクチンとグリーン・パスで大きく変わるという。野瀬は「他の競技と同じく、バレーボールリーグのレギュラーシーズンはずっと無観客でのゲームでしたが(3月末の)プレーオフからは観客を入れて行うと聞いています」と話す。「日本よりもスポーツが生活や地元に根付いているので、試合を見られないことに、みんな非常にストレスを感じていたと思います」

 ワクチンが世界全体へ行き渡るには時間がかかる現状で、スポーツとの関係において考えなくてはいけない倫理的な問題もある。アスリートは一般市民より優先的にワクチンを接種すべきかということである。特にこの夏には東京オリンピック・パラリンピックを控えているが、医療従事者、高齢者から順に並んでいる列を待っていると、夏までにアスリートの接種が間に合う国は、イスラエルを含め数カ国のみだと言われている。

 国際オリンピック委員会(IOC)は、五輪参加においてワクチンは義務ではないとしている。しかし接種を強く推奨しており、選手、関係者の接種費用をIOCが負担すること、中国からワクチン提供の申し出があったことも表明した。五輪のために本来、優先されるべき人を飛び越えて接種しようとする動きには、倫理的、道義的観点で各国のアスリートからは反発の声が上がっている。

 イスラエルで選手として優先されたわけではなく、順序通りに接種した野瀬は「アスリートとしてはオリンピックが開催して欲しいし、そのためにはワクチンは必要なのかもしれません。しかし難しい問題ですが、スポーツは生活に必ず必要なものではないですし、今はスポーツを優先させる時でもないのでは?と感じます。優先して接種することで選手が非難されて欲しくはありません。スポーツは人の生活を豊かにするものであって、人の反感を買うものではないと思います」と話す。野瀬のチームにも運営を担っている高齢者がおり、彼らは選手よりかなり先に接種したが、それは当たり前だとも言う。

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スポーツを行う意味を再考する時期?