東日本大震災から10年…被災地の光と影 「死」と真正面から向き合った取材者は今 (1/5) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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東日本大震災から10年…被災地の光と影 「死」と真正面から向き合った取材者は今

原発被災地の福島県浪江町の実情を知るため、新聞配達をしながら取材を進める三浦英之(右)

原発被災地の福島県浪江町の実情を知るため、新聞配達をしながら取材を進める三浦英之(右)

 死者1万5千人以上、行方不明者2千人以上――。戦後最大の災害となった東日本大震災に気鋭のノンフィクション作家はどう向き合ったのか。震災直後から約1年間、津波被災地の宮城県南三陸町に駐在し、目にした惨状や絶望の中を生きる人々の気高さを描いた『災害特派員』を出版した朝日新聞記者でルポライターの三浦英之氏と、震災直後の日本製紙工場(宮城県石巻市)の奮闘を描いた『紙つなげ』や、在宅介護を通じて命の終わり方にどう向き合うのかを投げかけた『エンド・オブ・ライフ』(Yahoo!ニュース|本屋大賞 2020年 ノンフィクション本大賞」受賞作)を昨年敢行した佐々涼子氏の対談の後編。被災地の光と影を見続けてきた2人は今、何を思うのか。

【写真】いま見ても心が…直後の宮城県気仙沼市の様子
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三浦:仕事柄、僕は震災の本をたくさん読んでいますが、佐々さんの震災後の日本製紙・石巻工場を描いた『紙つなげ!』は指折りの震災ノンフィクションだと思います。本屋大賞を受賞した『エンド・オブ・ライフ』も秀逸で、高齢化社会が進むこの国では誰もが「自分たちの人生をどう終わらせればいいんだろう?」と悩んでいる。その問いに一つの答えというかヒントのようなものを示してくれている。特に介護中にお母さんのお顔に蚊が止まっているシーンを読んで、僕は「これはすごい描写だな」と思いました。想像したものを超えてくるというか、フィクションでは描けないような状況を事実として描く。同時に、僕もライターなのでわかりますが、「死」と真正面から向き合い、詳細に描きすぎると、書き手自身の精神も傷ついていく。佐々さんの著作は海外からの遺体の搬送を描いた『エンジェルフライト』でも、震災を扱った『紙つなげ!』でも、「死」というものを極めて近接した距離で見つめながら描いている。佐々さんはあれだけの重いテーマを扱いながら、精神を痛めたり、病んだりするということはなかったのでしょうか。

佐々:自分じゃ平気だと思っているのに身体症状に出てしまう。『エンジェルフライト』も、半年ぐらい経って、突然甘酸っぱい死臭を感じたり、急に金縛りにあってこの世ならぬものを見ちゃったり。『紙つなげ!』は震災から1年半ぐらい経ってから取材に入っているので、最初は何もわからなくて。「自分が津波にも遭っていないのに書いていいのか」という負い目もありました。毎朝、津波のYouTubeを見て一日が始まり、取材で聞き取った寒さや風の向き、空の色などの細かなディテールを書いていく。頭の中に、360度の現地のスノードームのようなものを作り上げて、始終その中で生活しているんです。夏になっても私の周りだけあの日の雪が降っていて。書きあげるまでは、その世界に入っていればよかったので特に苦痛は感じませんでした。でも、そこから抜け出てしまうと、例えば新大久保から高田馬場に行く時に山手線に乗っていて、中吊り広告を見ていたら、「ああ、ここの高さだと津波で全部埋まっちゃうんだな」と思ったら息が苦しくなって、過呼吸みたいになってホームへと出たり……。


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