ちなみに前述した知人の会社は創業100年。上下関係の規律が厳しい社風が有名な会社です。いまどきの会社が風通しをよくするために行なっている「360度評価」(様々な立場の人が一人の従業員を評価するもの)などの取り組みもなく、当然ながら上司のハラスメントを聞いてくれる窓口もないといいます。
さらに調べていくと、女性に対する問題発言が平気で行われる職場に対して特徴が見つかりました。
それは人事異動が少なく、組織が硬直化していること。
上司と部下の関係が長く続き、別の上司のマネジメントを受ける機会が少ないので、不満があっても我慢するしかないのです。異動も困難なので、当然部下は上司に対して嫌われない努力をします。ですので、差別発言に直面しても黙認してしまうのです。こうして差別発言を差別とも思わない上司が誕生することになります。
もし、あなたがこうした上司に直面した際に、どうしたらいいのでしょうか。大事なことは差別発言があったら、その場で対策を講じること。あとで指摘すると「覚えていない」「終わったことはいいじゃないか」と真摯に受け止めない状況に陥る可能性があります。
とはいえ、直球で注意をするのも憚られる方も多いでしょう。そこで、発言を聞いたら速やかに
「どのような意図の発言でしょうか?」
と質問するのです。当人は差別発言であると気づいていない場合が多いので、質問によって問題に気づかせるのです。すると、慌てて弁解する上司が相当数現れるでしょう。
差別発言があったらその都度もれなく質問を続けるのもポイントです。すると、組織の中で慎む意識が醸成され、差別発言は減っていくことでしょう。ただ、質問を自分だけが行うと嫌われるリスクが高いと感じるならば、同僚と協力して質問を交代で行ってもいいかもしれません。
いずれにしても問題発言に気づかせる取り組みを果敢に行い、古い体質の職場から女性蔑視をなくしていきましょう。
■西野一輝(にしの・かずき)/経営・組織戦略コンサルタント。大学卒業後、大手出版社に入社。ビジネス関連の編集・企画に関わる。現在は独立して事務所を設立。経営者、専門家など2000名以上に取材を行ってきた経験を生かして、人材育成や組織開発の支援を行っている。