二度目の緊急事態宣言で、営業時間の短縮を余儀なくされるなど苦境が続く飲食店。こんな時に店に来てくれるお客さんは「神様」のはずだが、中には換気のために空けている扉を「寒い」と閉めてしまったり、午後7時を回ったのにお酒を出してくれとお願いしてきたり、困った「神様」たちもいるのだという。

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 千葉県船橋市の和風居酒屋。入り口の引き戸を開けると、すぐにカウンターがある。新型コロナの感染者が増えた昨春から、換気のために引き戸を少し開けて営業している。

 夏場は蚊や小さな虫が入って来て困らされたが、今はヒンヤリした隙間風が入り込む。運悪く入り口そばの席に当たった客は、その冷気を少しは背中に受けることになる。

 先日、来店した中年の男女2人を、空いていたその席に案内したところ、女性が「寒い」と口にし背中をすぼめて、何度も背中側の扉を振り返った。

「しぐさでだいたい分かるんですが、嫌な予感はしました」(店員の30代男性)。

 入店して20分ほどたった頃、連れ合いの男性が“気を利かせて”入り口の扉を閉めてしまった。

「たまに店員が見ていないときに閉めちゃう人はいます。我慢してほしいけど、寒いのは確かで申し訳ないとは思っているので注意はなかなかできません。気づかないふりをして、他の席が空けば案内するか、ちょっと時間を置いてから、お客さんみんなに聞こえるように『換気のために少し入り口を開けますね』と呼び掛けてから、また開けさせていただいています」(同)

 東京都東部の居酒屋では、酒類を含む、店内飲食用の全メニューの注文を午後7時までとしているが、テークアウト専用にその後も店を空けている。そのため、客はしばらく店に滞在はできる。

 早い時間から飲んで深酔いし、勢いが止まらなくなる客もいる。女性店員は語る。

「7時にラストオーダーを取り終えた少し後になって、『もう一杯だけ』と頼んできた男性がいました。ホッピーセットの、割り材の『外』だけが残って、お酒の『中』がなくなっちゃったということでした。こちらも困りましたが、『(外が)余っちゃってるんだから』と酔っていて、こちらが断っても聞いてくれなさそうだったのと、ラストオーダーのときに残っているお酒の量に気を利かせなかったこちらも悪いので、特別にサービスさせていただきました」

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「回し飲みだけは勘弁してほしい」