安西祐一郎塾長(当時)は、式辞でこう話している。

「義塾150年の歴史と共立薬科大学77年の伝統が一緒になり、ここから将来に向けて創造される可能性は無限の広がりをもつ。ぜひ、総合大学の一員として他学部・他研究科の学生とも交友関係を築き、薬学の社会を先導していってほしい」(慶應義塾ウェブサイト2008年4月7日)

 最後に、卒業後の進路だ。ここでは薬剤師国家試験合格率でみてみよう。共立薬科大薬学部入学生と慶應義塾大薬学部入学生はいずれも80%台後半で大きな差はない。もともと共立薬科大の合格率が高く、その水準が慶應になっても受け継がれている。

 さて、2023年の慶應義塾大歯学部誕生である。

 東京歯科大の入試難易度は私立大歯学部のなかでトップクラスである。医学予備校関係者はこう話す。

「慶應義塾大医学部、日本医科大、東京慈恵会医科大など私立医学部難関校に合格する受験者層が、慶應のブランド力に惹かれて、本来は医学部志望なのに慶應義塾大歯学部まで併願するかもしれません。となれば、慶應の歯学部にはやたら優秀な受験生が集まり、東京歯科大のときよりも難しくなるでしょう」

 ここでも慶應の名前が偏差値を押し上げることになりそうだ。

 両大学が統合したとき、それまでの東京歯科大の学生はどうなるのだろうか。慶應義塾広報室にたずねると、「現時点ではまだ決まっていません。今後検討する予定です」ということだった。おそらく、慶應の「塾生」になるだろう。共立薬科大の前例を無視できないはずだ。

 歯科医師国家試験合格率について、2019年、東京歯科大は96.3%と全大学でトップだった。この高い水準で慶應に引き継がれることになりそうだ。

 2000年以降、慶應義塾大以外にも、統合、合併した大学がいくつかある。おもなケースを紹介しよう。

 2002年、筑波大と図書館情報大図書館情報学部が統合し、筑波大図書館情報専門学群が作られている(現在は情報学群知識情報・図書館学類)。

 2007年10月、大阪大は大阪外国語大と統合し、大阪大外国語学部が発足した。その前後の入試難易度は大きく変わっている(ベネッセ・駿台模試など調べ)。

 2006年 大阪外国語大外国語学部 62
 2009年 大阪大外国語学部 69

 2007年に統合したとき、大阪外国語大の学生は学生証を返納し、大阪大の学生証を手にしている。なお、学生が「大阪外国語大学学生証」を記念に手元に置いておきたい場合、申請すればパンチで穴があいた旧学生証が戻ってきた。

 この統合によって、大阪大の学生数は東京大、京都大を抜いて、国立大学でトップとなった。

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