「20代の若い人はK-POPアイドルの写真を持ってきて、『この子みたいになりたい』って言ってきます。でも、私は無理なものは無理とはっきり言うので、顔の系統が明らかに違う場合は、『来世に期待しよう』って言っちゃいます(笑)。自分の顔の系統の中で最上位を目指すということならできますが、系統が違うと限界はあるので。逆に40代以上の女性は、誰かになりたいというよりは目がたるんできたのでぱっちりさせたいとか、昔の自分に戻りたいと希望される方が多いですね」

 以前に比べると、整形への心理的抵抗感はかなり薄れてきたものの、日本では「自然な感じ」を求める人が多いという。

「前に南米の患者さんに聞いたのですが、ブラジルだと年頃になったら親が豊胸や豊尻手術を誕生日にプレゼントすることもあるらしいです。整形は富裕層のステータスだし、男性も『俺の彼女は整形してきれいなんだ』と自慢するくらい。整形するのに変化がわからなかったら意味がないでしょう、というのは日本人とは全く違うメンタリティだなと思いました」

 上原氏は、美容整形を選択することに対して否定も肯定もしない。ただ、化粧品やセルフケアには限界があり、一度できたシミやシワは消えないが、プチ整形なら消すことができ、メスを入れる整形をしたことで自分に自信が持てたり、生きづらさが解消できたりすることがあるのも事実だという。

「自分が納得し、やる価値があると思って決断し、それで人生の生きづらさが少しでもなくなるとしたら、整形も選択肢の一つとしてありなのではないでしょうか。私は自分でやってみて、そんなに人生が変わったとは思わないけど、鏡に映った自分の顔を見て、昔と今の顔のどちらが好きかと言われたら、今の方がいいと思います。化粧品でやれるものは最大限に活用して、できないものは美容医療の力を借りる。さまざまな選択肢の一つに美容クリニックがあってもいいはず。ただ、その時にポジティブな情報もネガティブな情報も平等に知った上で、選択するかどうかをきちんと自分自身で選んでほしい、というのが私の願いです」

(取材・文=吉川明子)

◎上原恵理(うえはら・えり)
形成外科学会認定専門医、美容外科・皮膚科医、美容医療評論家、作家。2006年、群馬大学医学部医学科卒業後、東京大学医学部附属病院などを経て、現在は来年開業予定のクリニック開業準備中。数多くの豊胸や乳房再建手術、鼻尖形成、鼻翼縮小手術を手がけ、自らも数々の整形を行っていることから「女性の気持ちがわかる医師」として、多くの女性から支持を集めている。テレビや雑誌などのメディアでも活躍。著書に『すっぴんクオリティを上げる さわらない美容』(KADOKAWA)。