「ゴルフのスイングでは、重たいクラブの方が安定性は増すものですが、今回の渋野選手の変更も、さらなる安定性を求めたからでしょう。ただし、新しいスペックが練習では合っていても、プレッシャーのかかる試合で同じような結果になるとは限りません。今季はあまりにも試合数が足りず、クラブがフィットするまでもう少し調整が必要なのではないでしょうか」。

 練習場とコースで打球が違う。打ちっぱなしではナイスショットなのに、コースに行くと同じように打てない。これは、アマチュアゴルファー“あるある”だが、プロでも差は些細なものとはいえ、それは変わらないというわけだ。

「渋野選手は、ツアーがスタートした当初は苦戦していましたが、最近はクラブがしっくりしてきていることもあり成績が徐々に良くなってきています」と中井プロ。確かに渋野は渡米してから全て予選通過し、ポートランドとショップライトでは復調傾向にあるわけで、オフ中のスペック変更がここにきて成果を出し始めている可能性がある。

 そもそも、この時点で今年と昨年の渋野を比較するのは酷というものだ。渋野は42年ぶりに誕生した日本人2人目の海外メジャー覇者だが、同時に実質プロ2年目のかけ出しだ。

 中井プロは「今季の数試合で渋野選手の好不調を判断するのは、時期尚早だと思います。全英女子オープンにしても、昨年のように林間コースではなく今年はリンクスが舞台となりました。渋野選手はジュニア時代にナショナルチームのメンバーでもなく、海外コースでの経験はほとんどありません。初体験に近いリンクスで行われるメジャーで、連覇を期待されたことはキツかったと思います」と渋野に同情する。

 とにかく今年は、誰もが経験したことがない事態が起きている。ウイルスの蔓延により国内で初めて緊急事態宣言が発出され、各所で外出自粛を余儀なくされた。プロゴルファーもプレーをする場が奪われ、トレーニングや練習もままならず、オフに掲げたシーズンの目標が完全に崩れ去った。

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「成長ばかり続けるのは無茶な話」