■ファミマはフードロス対策も視野に

 新型コロナ対策だけではない。ファミリーマート(以下ファミマ)も、多彩なおでん商材をそろえた。

 なかでも昨年に引き続き、フードロス削減などの観点から開発した「レンジおでん」の販売時期を早めて商戦に臨む構えだ。今年、ファミマの店舗で鍋おでんを販売するのは全体の3分の1ほどの約5000店。10月13日から販売がスタートする、このレンジおでんを積極的に売っていく店が多いという。
 
 レンジおでんとは、昨年登場したレトルトタイプのおでんで、レジで注文すれば店員が容器に移し替え、レンジで温めて提供してくれる商品。おでんの具材を鍋で仕込む店員の手間が不要なうえ、賞味期限が180日と長いことから、店の従業員・消費者の両者から好評を得たという。

「通常の鍋おでんもリニューアルしましたが、今年はレンジおでん、パウチタイプおでん、容器に入ったセット販売のおでんなど、選択肢を多くそろえました。召し上がるシーンに合わせて楽しんでいただきたい」(ファミマ広報・和田賢治さん)
 
■セブンはカップスープタイプが仲間入り

 「今年もおでんを積極的に販売します」と、もっとも熱く語ったのがセブン-イレブン(以下セブン)。

「1977年から販売しているおでんは、セブンのソウルフード」という社員がいるほど、おでん開発にかける意気込みには並々ならないものがある。衛生面を配慮する取り組みを強化して、ローソンやファミマと同じく、鍋の前にアクリルカバーを設置。常時、鍋のフタを閉めて販売するという。

 改良ポイントは「つゆ」。基本のだしに「真鯛のあらスープ」を新たに加え、魚のうまみがより増した(全国9エリアで嗜好に合わせてだしを変更)。多くの具のうまみが混ざってできるおでんのつゆを、昨今、スープ代わりに楽しむ人も多い。
 
 また、新たなチャレンジもある。初めてカップスープタイプの「味しみおでん」を販売した。商品の特徴を一言でいうと、カップごとレンジで温めるだけで食べられるチルドおでん。
 
 担当者である商品本部の石田真さんによると、「この2月に北関東地区でテスト販売し、予想以上の反響を得て、8月から沖縄県を除く全国で展開している」という。やはりランチ時のスープ代わりに、また自宅で楽しむおかず&おつまみとして利用されているそうだ。

「こちらは総菜売り場に並びますが、鍋おでんのクオリティーに近づけるために、つゆや具材について鍋おでんのこだわりを踏襲しています」(石田さん)
 
 高い評価の品質レベルはそのままに、買い方を選べるようになったことで、「鍋からおでんを買いたくない」「店員が忙しそうなときに注文しづらい」と考えて買ったことがなかった、新規のおでんファンを囲い込むことができている。現に、「最近、気温が下がってきており、発売以降、好調な販売数を維持しています」(同)

 季節をまたぎ、味しみおでんが人気をキープできているのは「お客さまのなじみのメニューが手軽に購入できるため」と、石田さんは見ている。容器の中に入っているのは、大根・たまご・ちくわ・厚揚げ・白滝の5品。コンビニおでんは「大根・たまご・白滝」が、不動の売れ筋トップ3として君臨しており、コンパクトな容器に人気具材を盛り込んだことが当たったのだろう。カップスープタイプのおでんが、“買い置き”できるおでんの定番になる日も近い。
 
 そもそもコンビニにとっておでんは、野菜がとれ、こんにゃくなど低カロリーの具材が多いことから、「ヘルシーだ」として男女問わずリピーターが多い商品だ。

 今年は、自宅にいる時間が長くなったため「運動不足」「健康に気をつけたい」と食生活を気にする消費者がいっそう増えており、商機は広がったと言えるだろう。

 だがラインアップが多彩になった分、何がヒットするかわからない。鍋から買うか、売り場で選ぶか――消費者の食シーンにかかっている。(吉岡秀子)