――確かに、菅氏が自民党総裁選への出馬を表明した2日の記者会見でも森友、加計学園問題の再調査は必要ないという旨の発言をしています。その会見では、望月さんが「(官房長官会見では)都合の悪い真実への追及が続くと記者に対する質問妨害が長期間続いた。(中略)今後、首相会見では官僚が作った答弁書を読み上げるだけなく、自身の言葉でしっかり答えて頂けるのか」と質問した事に対して、菅氏が「限られた時間のなかでルールに基づいて記者会見を行っている。早く結論を質問していただければ」と答えると、記者席からは同調するような笑いも起こりました。菅氏の対応をどうみましたか。

望月 一部の政治部番記者との関係は相変わらずでしたね。序盤に番記者からの質問をいくつか受けていた際には、明らかに手元の資料を見ながら答えている場面があり、あきれました。事前に質問を渡していた記者がいたのでしょう。一方、事前に渡さずに聞いていることがわかる番記者もおり、皆が皆、菅氏側の要望に従っているわけではないこともわかりました。私の質問の際には、横目でちらっと司会役の議員の方を見て、質問を遮るようにうながしていました。官房長官会見で、前報道室長の上村秀紀氏との間で連発していたやりとりで、「質問を何とかしろ」という合図です。案の定、司会者は「簡潔にお願いします」と横やりを入れてきました。上村氏は、菅氏から「よくやった」と評価されて、沖縄総合事務局総務部長に栄転したと聞きます。質問妨害や制限を繰り返していた官僚を栄転させる、つまり菅氏の“私兵”となることが、官僚の出世の条件になっているのではないか。これは7年8カ月の安倍長期政権の中で確固たるものとして確立されてしまったと思います。

 逆に、ものいう官僚たちはことごとく飛ばされています。菅氏の官僚選別のプロセスのどこにも国民の公僕としての公務員の姿はありません。思想家の内田樹氏が指摘していますが、安倍政権で決定的に失ってしまったのは、政治家や官僚のインテグリティ(誠実さ)だったのだと思います。道徳や倫理が欠如した政治を長期間にわたって見せられ続けた結果、真っ当な道を歩もうとしてきた政治家や公務員、国民に深い失望と精神的な揺らぎが芽生えてしまったように思います。

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報道番組に「放送法違反にしてやる」