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「黒川騒動」は一体何だったのか…“ミスター検察”と呼ばれた男も巻き込まれた政府の人事介入問題の根源

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5月15日、国会前にて。検察庁法改正案に抗議する声は急速に広がった (c)朝日新聞社

5月15日、国会前にて。検察庁法改正案に抗議する声は急速に広がった (c)朝日新聞社

“ミスター検察”と呼ばれた男がいた。

 40年にわたって検察畑を歩き、最後は検事総長まで務めた伊藤栄樹氏である。「巨悪を眠らせない」「国民に嘘をつかない」などの名言を遺した伊藤氏は、晩年がんを患い任期途中で退官するが、その死の間際に渾身の回想録を執筆した。それが、このたび緊急復刊された文庫『巨悪は眠らせない 検事総長の回想』である。

【写真】「ミスター検察」と呼ばれた伊藤栄樹氏

 伊藤氏の逝去から30余年――今回の黒川騒動をはじめ、検察と政治をめぐる構造的な問題が露呈するなか、ミスター検察が遺した言葉には、いまこそ読まれるべき重みと強さがある。本書の復刊に際し、ジャーナリスト・村山治氏による解説を特別公開する。

*  *  *
■「黒川騒動」

 2020年前半、検察は震撼(しんかん)した。

 1月末、安倍政権が次期検事総長含みで、「政権に近い」とされていた黒川弘務東京高検検事長の定年を国家公務員法を根拠に半年間延長すると、野党側は「違法な法解釈による違法人事」と猛反発。公職選挙法違反の疑いが指摘されていた、首相主催の「桜を見る会」前夜の夕食会での飲食代提供問題などで検察の手心を期待しての人事ではないかと勘繰った。

 さらに、政府が必要と認めた検察幹部については定年延長を可能にする検察庁法改正案が上程されると、法案に反対するツイッターの投稿が爆発的に拡大。松尾邦弘元検事総長ら有力検察OBまで「検察への不当な人事介入だ」と反旗を翻すに至り、政権側は、通常国会での改正案成立を断念した。

 当の黒川氏が、新型コロナウイルス感染防止のため外出自粛要請が出ているさなかに親しい記者と賭け麻雀に興じていたことを週刊誌が報じたのはその直後。黒川氏は引責辞任し、法務・検察が当初総長候補としながら、黒川氏の定年延長のあおりで総長昇格が消えたとみられていた林真琴名古屋高検検事長が急遽、検事総長含みで黒川氏の後任に収まった。

 政治による検察人事への介入が表面化したのは、1951年、吉田内閣の大橋武夫法務総裁(法相)が政界捜査に積極的な木内曽益(きうち・つねのり)最高検次長検事を格下の札幌高検検事長に異動させようと画策し、木内氏が抵抗の末、閣議決定直前、辞表を提出した「木内騒動」以来だ。


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