取材中に涙をみせた小川淳也衆議院議員(撮影/写真部・掛祥葉子)
取材中に涙をみせた小川淳也衆議院議員(撮影/写真部・掛祥葉子)
小川議員を17年間、見続けてきた大島新監督(撮影/写真部・掛祥葉子)
小川議員を17年間、見続けてきた大島新監督(撮影/写真部・掛祥葉子)

 現職の衆議院議員・小川淳也さんを追ったドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』が、異例の大ヒットとなっている。コロナ禍で映画館不況が続く中の6月13日に都内2館で封切られてから、連日ほぼ満員御礼。上映館は徐々に増え、8月までに全国57館上映になる予定だ。

【写真】初対面で「こんな人がいるのか?と胸を打たれた」と話す大島監督

 政治家のドキュメンタリー映画が一体どうして? どんな人が見に来ているのだろうか? 映画を上映しているうちの1つ、東京中野区の「ポレポレ東中野」を訪ねて、映画終了と同時に見に来た人に話を聞こうと待ち構えた。

 すると、20代、30代らしき若い人がドッと出て来て驚いた。事前に「若い観客が多いんです」とは聞いていたものの、予想以上だ。慌てて一人で来ていた女性に声を掛けてみると、「25歳です。映画は面白かったし、十何年も一人を追っているので、重みを感じました。小川さんはまっすぐな方だなぁと思いました」という。選挙に関心があるので、一人で見に来たのだそう。

 次につかまえたのは20代3人組の女性たち。「ツイッターで森達也監督が勧めているのを読んで来ました。今の政治に特に興味があるわけじゃないけど、こういう人が政治家にいるんだなと驚きました。正直な方ですね。応援したくなります。何度も号泣しました」と、それぞれが言い、「とても面白かった!」と明るく声を揃える。そして、ゆっくり出てきた70代と60代の女性2人組にも聞いた。

「ラジオで監督さんが話をされてるのを聞いて来ました。やはり自分の信念をずっと持ち続けておられること、大事ですよね。そこに共感しました。見に来てる人に若い人が多くてね、希望が持てます。日本の政治の仕組みの中で、選挙区当選じゃなくて比例区当選だと党内での発言力が弱いとか、初めて知りました。そんなこと、おかしいですよ。大統領制だったらいいのに。私たちが選びたいです」

 製作会社の方から伺った話では、18才の男子大学生が映画を見て「お母さんも絶対に見に行った方がいい」と母親に言い、「息子は政治に関心があるようでもないのに、どうして来たんだろう?」と、ご自身も興味を持って見に来たんだそう。ドキュメンタリー映画ではめったにない、口コミの広がり方だ。

 話は聞けなかったものの、筆者も10代後半らしき男の子2人組の姿も見かけた。これまで、こうしたドキュメンタリー映画は中高年以上の人たちのものだった。増してや政治ものなんて。ドキュメンタリーではないが、映画『新聞記者』を見に行ったとき、周りの観客はほとんどが50代以上に見えた。それが今、政治家のドキュメンタリー映画を若者たちが大勢見に来て、その生き方に共感の声を発する。驚いた。

 映画の魅力と、その共感の中身とは? “主役”の小川淳也さんと、監督の大島新さんにお話を伺いながら、探った。

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