タイムトラベルを単なるファンタジーとして軽んじてはいけません。大きな価値があります。現に、たとえば野球チームの監督が「ピッチャーの◯◯は過去にどんなボールを投げていたかな」と「過去の世界」のことを思い出して分析すれば、「未来の世界」にヒットを打つ可能性を上げることもできます。現実の“物”の世界には繰り返しのパターンが多いので、「経験を生かす」「学習する」といった点から考えると、タイムトラベルはしばしば有効に働きます。

 過去を描いた歴史小説を読んだり未来を予測したSF映画を見たりと、タイムトラベルを楽しみましょう。それは、個人の人生を豊かにするだけでなく、人類の未来社会を良くする手がかりにもなるのです。

【今回の結論】あらゆる機械は、変化する「現実の“物”の世界」の中に存在しているので、「過去や未来の世界」に行くタイムマシンは原理的に製作できない。しかし、「過去や未来の世界」を想像するタイムトラベルは可能であって、これは人類にとって大きな価値がある。

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石川幹人

石川幹人

石川幹人(いしかわ・まさと)/明治大学情報コミュニケーション学部教授、博士(工学)。東京工業大学理学部応用物理学科卒。パナソニックで映像情報システムの設計開発を手掛け、新世代コンピュータ技術開発機構で人工知能研究に従事。専門は認知情報論及び科学基礎論。2013年に国際生命情報科学会賞、15年に科学技術社会論学会実践賞などを受賞。「嵐のワクワク学校」などのイベント講師、『サイエンスZERO』(NHK)、『たけしのTVタックル』(テレビ朝日)ほか数多くのテレビやラジオ番組に出演。著書多数

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