だが、ここ数シーズンで潮目は変わりつつある。それはリヴァプールの大成功が大きな要因だろう。

 2015年から率いるユルゲン・クロップの下、クラブは彼の望むチーム作りのために奔走してきた。コマーシャル面ではなくピッチ上の成功のための補強を敢行し、指揮官が望む選手のためなら金額に躊躇しない。フィルジル・ファン・ダイクやアリソンらクロップ監督が熱望した選手たちは、当初こそ「法外な移籍金」と揶揄されたものの、今や金額について語る人はいないだろう。昨季は14年ぶりにビッグイヤーを獲得し、今季は念願のプレミアリーグ初制覇まであと一歩(現在は新型コロナウイルスの感染拡大を受けリーグは中断)。一貫した哲学を持つリーダーを軸に中長期的な視野をもって運営することによって、大きな成功をもたらすことが改めて証明された。

 先に例に挙げたレアル・マドリーでもこの流れは加速しており、現在は復帰したジネディーヌ・ジダン監督を軸にチーム作りが進められている。補強権限も有しているようだ。「メガクラブ」でも選手・フロント主導のマネジメントから、監督主導のマネジメントへと移行し始めた。

 つまり「メガクラブ」内でも評価基準が変わりつつある。そして“監督に好かれやすい”日本人選手には追い風と言えるだろう。現に南野は、クロップ監督が望んで実現したディール。レアル・マドリーへ加わった久保も、ジダン監督は「マドリーの未来」と将来の中心選手になることを願っている。

 ハイレベルな競争が存在し続けることは変わらないし、様々な方面からのプレッシャーも変わらず強烈であり続けるだろう。技術・フィジカル的にも世界トップクラスが求められ、その水準に達することが大前提だ。

 しかし、時代は変わりつつある。要求されるものは変わりつつある。そんな現代サッカー界において、世界最高峰のクラブで活躍する日本人選手が見られる日もそう遠くないはずだ。(文・三上凌平)